長崎総合科学大付の「ゴリラ」こと、FW安藤瑞季(3年)が前回王者撃破の1発を決めた。青森山田戦の前半25分、「ゴリゴリ」とドリブル突破してゴール右隅にグラウンダーのミドルシュート。初戦から3戦連発とセレッソ大阪入りする実力を見せつけ、1-0で初の8強に導いた。ただ累積警告で流通経大柏(千葉)との準々決勝は出場停止となった。

 長崎総合科学大付のエースFW安藤が前半25分に「野生児」の本領を発揮した。敵陣やや左サイド中央付近でゴールを背にボールを受け、ワントラップから反転して切り返すと、一瞬にして青森山田のDF2人の間を切り裂いた。2人のDFがついてきたが、お構いなしで「ゴリゴリ」とゴールへ突進。右へ右へとドリブルしゴール中央へ。ペナルティーエリアが目に入ると迷わず右足を振り抜いた。シュートはゴール右隅へ。「主役の演技」にほれ込むように、スタジアムがどよめき、歓声が上がった。

 安藤 ワントラップして抜けると思った。切り返したらゴールが見えたんで狙いにいった。あの隙間(右隅)を狙ってましたんで。自分の良さが出ました。

 選手権3戦連発の3点目で優勝候補を破り、チームを初の8強に導いた。「今大会はペナルティーエリア内では厳しいと思うので、外からシュートを打つようにしている」。得点シーンだけでなく後半も2本のシュートを放ったが、ロングシュートと右サイドから角度のないところからクロスと見せかけてゴールを狙った。小嶺忠敏監督(72)は体格のがっちりした安藤に「あいつはゴリラみたいでしょ。ゴリゴリ君だから。無理してでもシュートしろと言ってます」。指揮官が「大久保よりは素質は上」と国見(長崎)時代の教え子で、東京から川崎Fに移籍が決まったFW大久保の高校時代を上回る評価を下すほど、将来性は高い。

 ただ累積警告2枚となり、5日の流通経大柏戦は出場できなくなった。小嶺監督は「安藤がいないから、次はどうしようか。今夜寝れませんね」と少し笑った。安藤は「ふがいない自分に腹が立つ。次の試合のためにみんなを一生懸命サポートします」。「主役」から「黒子」へ。ゴール級のサポートでチームを引っ張り続ける。【浦田由紀夫】