後半45分を20秒過ぎて、攻め上がった鹿島アントラーズDF内田の前にボールが転がってきた。右足を振り抜く。地をはう弾道は、ゴールの右枠を捉えていた。だが、惜しくも好セーブに阻まれた。

 放ったシュートは上海申花の12本を上回る21本。ボールはほぼ支配した。それでも前半立ち上がりの失点が響き、ホームで引き分け。「よくある試合ですね、何回かビッグチャンスがある中であと1本入らないのは」。苦笑い。ただ、悲愴(ひそう)感はなかった。

 鹿島で、10年5月12日のACL浦項(韓国)戦以来2835日ぶりに臨んだ公式戦。「お帰りなさい」の声が飛ぶ中で、後ろから前へ、ときには中へ走り続け、ボールを送り続けた。「ゴールラインまで行けるのは動けているとき」。5カ月ぶりに90分間、戦った。

 勝ち点3は奪えなかったが「めちゃめちゃいいサッカーだった。絶対に間違っていない、このやり方は。自信を持っていい」。内田の言葉に曇りはなかった。