勝った瞬間の喜びようは、まるで優勝したかのようだった。サンフレッチェ広島が、94年以来24年ぶりに開幕3連勝を飾った。城福浩監督は「今やれる守備をしっかりやって、我慢して、カウンターでチャンスをつくった。今やれることを全て、彼らは出してくれた」と選手をたたえた。

 開始早々に自分たちのミスで決定的なピンチを迎えたが、GK林卓人が1対1を止めると、徐々に堅い守備網が機能した。ボールの保持は許しても、主導権は広島が握っていた。

 そして後半6分、右サイドをMF川辺駿が切り裂き、そのクロスはMF三竿健斗にカットされたものの、不用意な縦パスに右サイドバックの和田拓也が反応した。相手のペナルティーエリア内でボールを奪い、慌てて取りに来た三竿健を切り返して交わすと、右足で先制点を奪った。

 ピンチは幾度となく訪れた。後半18分にはPKを与えてしまい、同点も覚悟の場面を迎えた。だが、ここでもGK林は冷静だった。

 「(PKを)取られた瞬間から、キックがセットされるまでの間、自分の中でどれだけ冷静に集中力を高められるかと、すごくそこに集中して行けた。最後、キックのタイミングだけ合わせるところに集中できれば止められるんじゃないかと思い、ギリギリまで見て、タイミングが遅れることなくできた」。

 FW金崎夢生のPKをストップ。はね返りのMF土居聖真の至近距離のシュートも、胸ではじいた。

 城福監督は林について「言うことない。開始早々の水本のバックパスミスも含めると、相手のヘディングが正面に飛んだり、彼のところにボールが全て吸い寄せられるような、そんなゲームだったと思います」と守護神に感謝した。その上で「PKも含めて多少の運はあったかもしれませんが、それを呼び寄せたのは体を寄せたり、カバーしたり、最後のところで足を出すという選手の気持ちが乗り移ったと思います。ここで満足せずにまた、次の試合でこれを生かしたい」。

 昨季は15位と、J2降格をギリギリで避けることができたチームで、前評判も決して高くはなかった。その広島が、浦和、鹿島と強豪を連続して、ともにアウェーで倒して、暫定ながらも首位に立った。