J1浦和レッズDF槙野智章(31)が、5日にワールドカップ(W杯)ロシア大会から帰国してから6日後の松本山雅FC戦で、DFマウリシオ(26)の同点ヘッドをアシストするなどチームの逆転勝ちに貢献した。

 試合後は「(心身)両方、かなり難しかった」と、世界の舞台を終えた後の複雑な現状を吐露。今後、個人として「しっかり目標を作らないといけない」と漏らした。

 前半10分、先制点を取られると、槙野は手を大きく振って周囲を鼓舞した。「天皇杯は、こういうものですから。アウェーの地でJ2と戦うのは難しい。とにかく最悪のシチュエーションを頭に入れた上で、ゲームを進めることは理解していた。先制点を取った戦い方、取られた後の気持ちの持ちようを選手、チームに対して言っていた」。

 チームは、運動量が多く、かつ局面で激しく体を当ててくる松本に苦しんだ。その中、前半42分、MF柏木陽介が蹴った右CKを、ファーサイドの槙野が頭で折り返し、マウリシオが飛び込んでヘッドで押し込んだ。

 後半も、前線までボールを運んでも、なかなか決定機を作り出せず、シュートも枠を外した。サポーターからは「走れ!」、「頑張れ!」、「何やってるんだ!」などと声援と厳しいゲキが飛んだ。通り雨が降り、雨脚が強くなってきた後半40分、再びマウリシオが、柏木の右CKを頭で押し込んで逆転勝ちした。

 槙野は、ともにW杯帰りのDF遠藤航(25)らと手をつなぎ、万歳した。「とにかくチームのためにやるだけだった。天皇杯は、こういう戦いだと理解した上で、チームも戦うことが出来たのが逆転にもつながった。先制点を取られても落ち着いてゲームを進めることが出来た。良かった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 ただ、4年に1度のW杯という大舞台で、6月28日の1次リーグ・ポーランド戦にフル出場し、帰ってきた。「全てやり切ってW杯を終えて帰ってきましたので」と語るように、心身の持って行き方が難しい状況だった。

 8日に浦和に合流後、オズワルド・オリベイラ監督(67)と話し合った中で「休まずに、ちょっとやって欲しい」と天皇杯への出場を求められたという。「監督と話をして、この試合の重要性は理解した上で、たので、そこは、うまく切り替えてやりました」

 チームは18日に再開するリーグ戦は14位、ルヴァン杯はプレーオフステージでJ2ヴァンフォーレ甲府に敗れ敗退が決定と厳しい状況だ。槙野は、今後のチームについて「とにかくチームは天皇杯を取るためにやるだけ。リーグは少しでも上に上げられるように戦わないといけない」と明確に目標を語った。

 ただ、個人としての今後に話を向けられると「個人としては…ちょっと、当面、しっかり目標を作らないといけない。何を目標にしなくてはいけないのかを、考えてやらなくてはいけないと思っています」と、悩ましい胸の内をかいま見せた。【村上幸将】