秋田商が龍谷(佐賀)とのPK戦を制し、32大会ぶりに8強入りした。後半40分、DF山本翔太(3年)の同点ヘッドで1-1に追い付くと、PK戦では山口雄也(2年)が4本中2本を「神セーブ」で止めた。準々決勝は明日5日に行われる。

後半ロスタイム寸前、秋田商が神懸かって勝ち残った。まず同40分、右CKからニアで待ち構えたDF山本が頭で合わせ、「最後のセットプレー。自分が決めるしかない」と同点弾を決める。PK戦でも神が降臨。背番号12の2年生GK山口が公式戦初のPK戦で「皆を信じて、相手の利き足の対角に飛んだ」と読みも反応も鋭く、1、3本目を好セーブ。ともに左右のポストまで横っ跳びし、身長180センチの腕いっぱいに伸ばした指先ではじいた。

最後はエースFW長谷川悠(3年)が「みんなPKを楽しんでいた。自信を持って蹴るだけだった」と、得意の左足でゴール右に突き刺した。MF鈴木銀華(3年)ら攻撃的選手4人を交代で欠いたが、小林克監督(45)は「山口がゾーンに入って集中できていた。『必ず1本止めるから、3年生で蹴ってこい』」と胸を張って送り出し、4人全員がPKを決めた。

14大会ぶりの県勢勝利から、32大会ぶりの県勢8強へ。2年連続4強入りした前回チームで、監督を務めた外山純氏(享年69=J3秋田会長)が昨年8月に死去。選手は喪章を着けて今大会に臨んだ。小林監督は「『赤い壁』と呼ばれた守備で激しく。あきらめない粘り強さも秋田の県民性」とOBとして名門のDNAを引き継ぎ、復活させた。甲子園準優勝の金足農をほうふつさせる快進撃に、「カナノウは9人でしたが、11人では無理。控えも準備させ、一体になって戦えました」と満足感。準々決勝の相手は、前回準Vの流通経大柏(千葉)。「当たりたかった。ボロボロに砕けるまで、サッカーを教えてもらいたい」とV候補の胸を借りる。【中島正好】