電車の中ではみんな下を向いてスマホの画面にくぎ付け-。今では珍しくない光景だが、そんな中、サッカー評論家のセルジオ越後氏(73)はよく、周りを見回して「人間観察」をすることがある。

先日は、ある女性がスマホに夢中になるあまり、下車する駅に気づくのが遅れて、ドアに挟まれた場面に遭遇。ドアはほどなく再び開いたが、挟まれている間も女性はスマホの画面から目を離さず、操作を続けていたという。スマホ依存症を連想させる皮肉なハプニングだ。「みんな自分を見つめるのは難しい。人を見て反省する」と同氏。いわゆる「人のふり見てわがふり直せ」で、この女性のエピソードは「自分も同じようなことをやっていないか?」と、振り返るきっかけになるという。

同氏は、さまざまな連絡事項をメールで受けても、返事や確認は電話で、自分の声で直接伝える。「電話は僕にしかできないけど、文字(メール)は誰でも送れる。文字を打つ作業だけでは、ぬくもりがない」が信条だ。文字と声、デジタルとアナログを使い分ける。これもセルジオ流、自身の“独自ルール”ということだ。

◆セルジオ越後 ブラジル・サンパウロ生まれの日系2世で18歳で同国名門コリンチャンスとプロ契約。ブラジル代表候補にもなった。72年に来日。78年から「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、延べ60万人以上を指導。その経験から過去に「セルジオ越後の子育つ論」など子育て本も出版。93年4月から日刊スポーツ評論家。06年文部科学省生涯スポーツ功労者表彰受賞、13年外務大臣表彰受賞。H.C.栃木日光アイスバックスのシニア・ディレクター、日本アンプティサッカー協会最高顧問。