15位浦和レッズが、16位サガン鳥栖との勝ち点4差をかろうじて保った。

“バス囲み”騒動後の試合で敵地に乗り込み前半2点を先行したが、後半3失点。同ロスタイム7分にFW杉本健勇(26)が同点PKを決めて追いついた。25日の天皇杯4回戦でアマチュアに敗れ、PKを外していた男が借りを返した。

一方で鳥栖との勝ち点差を広げられず、残留争いから抜け出せなかった。

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乱高下したゲームの帳尻を、どん底の杉本が最後に合わせた。浦和が2点リードから1点を追う側に回されていた後半ロスタイム、7分。土壇場で得たPKをDF槙野が杉本に託す。ゲーム主将としてキッカーを務める選択肢もあったが、槙野は「この状況だからこそ健勇に」と任せた。「マジすか」と驚いた杉本も腹を決める。GKの動きを見極め、逆のゴール右へ。「人生で最も緊張した」PKを、努めて冷静に沈めた。

この状況、とは3日前の天皇杯。4部相当の格下JFLのHonda FCに完敗し、サポーターがバスに詰め寄った。フル出場した杉本は今回と同じ後半ロスタイムにPKを外し、バスが停車した45分間で最も罵声を浴びた選手に。鳴り物入りでセレッソ大阪から加入しながら今季1得点で「セレッソ帰れよ!」と叫ばれた。背水の鳥栖戦。「後悔はしていないけど反省はした」という男が「サポーターは逃げずに本気で応援してくれる。俺も逃げられない」と重圧をのみ込んだ。

伏線には興梠の今季初となる負傷欠場もあった。チーム最多11得点のFWが痛みの蓄積でベンチ外。この日の18人の合計得点が10で興梠1人に及ばない中、FW武藤に今季初ゴールが生まれ、不動のキッカー不在だったからこそ杉本にリベンジの機会が舞い込んだ。

ただ、美談では終われない。後半は駅スタの沸騰に浮足立ち、13分間で3失点という屈辱。杉本も「追いついてOKの気持ちはない」と言った。敵地に足を運んだ約1800人に背中を押され、何とか鳥栖との勝ち点4差を保ったが、リーグ8戦勝ちなし。ロッカー室も、喜べず、消沈もせずの不思議な雰囲気だったという。その中で、この勝ち点1を残留への種火とするしかない。試合後は拍手、バス出発も穏便に見送られたが、残留争いからは抜け出せなかった。【木下淳】