今季のデータを独自の視点で分析して各賞を選出する、毎年恒例「ニッカン・フットボール・アウォーズ」を3回にわたって連載します。第1回は守備編として日本代表MF久保建英(18=マジョルカ)を取り上げます。6月のスペイン移籍前までFC東京の首位快走の原動力となった攻撃的MFですが、実は守備の貢献も非常に大きく、先発試合の1試合平均失点はリーグ最少の0・50点。J1の「軽減守備率」で1位に輝きました。【構成=石川秀和】

前線での積極果敢な仕掛けが、結果的に後方の守備陣の負担を軽減した。守備面の物足りなさを克服した久保は開幕からスタメンの座を勝ち取り、13試合に出場。そのうち12試合に先発した。先発試合のチーム失点はわずか6点。同1試合平均0・50失点は、10試合以上先発した287人中最少だった。スペインに移籍するまで4ゴール3アシストと攻撃面で存在感を示し、東京の前半戦首位快走の原動力になったが、その一方でチームの守備にも好影響をもたらしていたことが明らかになった。

巧みな足技で敵陣ゴール前に切れ込んだ。1対1の局面でドリブルを仕掛けて相手を抜き去った回数は29回。年間1024分の出場ながら、FWディエゴ・オリヴェイラ(2808分=36回)に次いでチーム2位だった。そこからのクロスが13回、シュートで終わったのは10回。きっちり攻め切ることで、チームは次の逆襲速攻に備えて守備陣形を整えることができた。この好循環が前半戦はよりスムーズだった印象だ。

長谷川監督は久保の移籍時に「たかがワンピース、されどワンピース。抜けた穴は非常に大きい。彼のタメ、意外性はなかなか他の選手では補えない」と話していた。久保がチームを離れるまでは9勝3分け1敗と高勝率で、その後は10勝4分け7敗と失速。最終的に優勝を逃した。18歳のアタッカーと「タメ」を張れる選手はおらず、不在であることが逆に、その存在の大きさを際立たせた。