Jリーグも今年で28年目。過去の歴史をさかのぼると、驚きの出来事がありました。偉業、世界的な記録、珍事…数ある中から、えりすぐりの“すべらない話”をご紹介します。

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95年4月1日。3年目のJリーグで、とんでもない出来事が起こった。

熊本で開催された、横浜フリューゲルス-サンフレッチェ広島の一戦。当時、九州にJクラブがなかったこともあり、横浜Fは熊本などを「特別活動地域」として、現地でホームゲームを開催していた。

アウェーチームだった広島は、試合用に白のセカンドユニホームを持参した。ところが、横浜Fのファーストユニホームも“白”。この事態に気がついたのは、なんとキックオフ3時間前だった。紫のファーストユニホームを取りに戻る時間はない。そこでチームスタッフは、スタンドのサポーターからユニホームを借りるという、前代未聞の決断をした。

もちろん、そのままでは着用できない。背番号12のユニホームは、紫色のペンで「11」に修正した。背番号のないものには、白いテープで数字を張りつけた。さらに会場ボランティアの主婦や女子中学生10人を動員し、はがれ落ちないように針で縫いつけた。完成したのは、なんとキックオフ10分前だった。

このドタバタ劇にもかかわらず、広島は延長Vゴールで横浜Fを下し、勝利を収めている。ユニホームを貸したファンは「自分のユニホームを着てくれただけでもうれしいのに、勝ってくれた。感激です」と大喜びだったといい、広島の選手は「恥ずかしかったけど、次もこれでいきたい」と苦笑いするしかなかったそうだ。