132日ぶりに、J1が再開した。新型コロナの感染拡大を防ぐため、全試合リモートマッチ(無観客試合)で開催された。スタンドから力の限りの応援で選手の背中を押していたサポーターは、スタジアムで再開の時を迎えることができなかった。ようやく訪れた運命の日を、どう過ごしたのか。ホーム等々力に鹿島アントラーズを迎えた川崎フロンターレのサポーター有志の1日に潜入した。

試合開始9時間前、午前10時。JR武蔵小杉駅近くのフロンターレカフェには、クラブ関係者とサポーター有志の姿があった。リーグ戦再開に向けて発足させた「Re/☆☆☆ト(リスタート)」プロジェクトの一環で「Paint it Blue 2020 ~今こそ川崎を青く染めろ~」イベントを実施。川崎の街をフロンターレグッズなどで青色に染め、一体感を生み出してエールを送る準備を進めていた。

新型コロナとの闘いで、サッカーは多くの制約を携え、今までとは違う姿で日常に帰ってきた。スタンドで声をからすことも太鼓をたたくこともできない。「サポート」の意義は何なのか-。サポーター団体・川崎華族の山崎真代表は「大切な選手たちだから(無観客でも)万全な状態でやってもらいたい」という思いと「やるからにはいろんな形で応援したい」という思いのはざまで思考を巡らせ、クラブと協議を重ねた。

導き出した結論が、02年から続けている「Paint it Blue」活動だった。「再開すると少しでも感じてもらえるよう、フロンターレのカラーを街に出す。スタジアムに入れなくても地元の人たちがフロンターレが試合をやるという喜びを味わえるのはいいことだと思うし、それを感じて選手たちが奮起してくれれば」。川崎Fは選手が地元商店にあいさつ回りをするなど地域交流を続け、Jリーグ調査の地域貢献度は10年連続で1位に輝く。困難の中でピッチに立つ選手を応援すべく、今こそクラブと街が築いてきた絆でサポートするとの思いに至った。

この日は縦101・5センチ、横157・5センチのクラブのフラッグを用意。約2時間、等々力周辺のクラブ応援店舗に贈呈して店先に掲げてもらうよう依頼して回った。コールリーダーの小俣海人さんは「街に彩りをつけられたが今日が始まり。こういう活動を積み重ねて川崎中が青く染まる日まで協力しあってより良い街にしたい」と目を細めた。

午後7時。川崎市内のすし店の座敷から試合を映すテレビを見つめた。前半2分、DF谷口の先制ゴールにエアハイタッチで沸いた。山崎代表は「見に行きたかったか、と言われると難しいけど、再開することで一喜一憂できるし、街もチームも幸せ」と、うれしそうに笑った。【浜本卓也】