横浜FCのFWカズ(三浦知良)が13年ぶりの舞台で、J1最年長出場記録を打ち立てた。川崎フロンターレ戦に先発し主将マークを巻き56分間プレー。今季リーグ戦初、53歳6カ月28日での出場で、12年11月24日の横浜F・マリノス戦で途中出場したFW中山雅史(当時北海道コンサドーレ札幌)の45歳2カ月1日の記録を大幅に更新した。カズは無得点だったが、チームは首位を独走する相手に2-3と善戦。キングカズがまた1つ、日本のサッカー界に新たな歴史を刻んだ。

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J1のピッチに13年ぶりに立ったカズが、42歳のMF中村、39歳のMF松井と首位を独走する川崎Fに立ち向かった。下平監督、仲間に後押しされ赤い主将の腕章を巻いた。「みんなの気持ちを腕章にこめ、責任を持ったプレーをしたいと思った」。1人で試合を決めていた約25年前のプレーとは違っても、存在感はやはり別格。後半11分までプレーし、ピッチを出る際には相手の鬼木監督からもねぎらわれた。J1最年長出場記録更新に「監督を含めたスタッフ、みんなに感謝したい」と言った。

リーグ戦出場はJ2だった昨年4月7日のアビスパ福岡戦以来、1年5カ月ぶり。18年もJ2で39試合にベンチ入りしたが、先発は0。19年3月、FC岐阜戦で11カ月ぶりに先発した際、心から感じたことがあるという。

ちょうど親交のあるイチロー氏が東京ドームの試合を最後に引退を発表した時期と重なる。イチロー氏は試合に出られない状況下で練習を続けた日々を「ささやかな誇り」と表現した。カズは「レベルも違うんですけど」と前置きしこう続ける。「あの時の1年間、変わらずにやらないといけない、とずっと自分も思っていて。我慢して我慢して我慢して…。いつか回ってくるって。先発の試合を迎えた時に、去年の1年は大きいなと。イチローさんが言っていたことを、自分も後で感じました」。

この1年も、同じように準備してきた。全ては、サッカーへの情熱があるから。「毎週試合に出たい、メンバーに入りたい。それだけ」。今季初出場のリーグ戦で首位を独走する相手とも、しっかりと戦ってみせた。それでも「もっとチャンスに絡んでいきたい。物足りなかったのはある」と言った。

今後は1994年にジーコ(鹿島アントラーズ)がマークした41歳3カ月12日のJ1最年長得点記録の更新も期待される。「今日の経験を次のリーグ戦に生かしたい。リーグ戦に出るチャンスを得るためにチーム内の競争を勝ち取っていけたら」。カズのサッカーへの情熱は、さらに燃え上がっていた。【岩田千代巳】