ブラジル1部の古豪ボタフォゴMF本田圭佑が立ち上げ、今季から東京都社会人4部リーグに所属する「One Tokyo」改め「Edo All United」は、コロナ禍の特別対応のリーグ戦で開幕3連勝と順調に勝ち点を積み重ね、3部昇格を目前にしている。

「百獣の王」こと、タレントの武井壮監督も「今季はシーズン全勝で、3部への昇格戦を残すのみ。初年度優勝、そして来季へ向けて更に強化するべく動いています!」と鼻息が荒い。

何もかもが新しいクラブ。公式サイトには、本田の「いわゆる『リアルサカつく』を皆んなとやりたいと思っています」との言葉がある。クラブを育てるセガの人気ゲーム「サカつく」のリアル版だという。

実際、オンラインサロン(月額会員制のコミュニティー)があり、会費を払った会員のみがクラブの意思決定にかかわることができる。本田も会員の1人で、平等をうたっている。

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武井監督も、投票で選ばれチームを率いる。任期はとりあえず2年だという。日本の頂点であるJ1リーグから数え、10部相当ではあるが、サッカーの監督経験なし。異例の人事だったが、7月の初戦ではスーツでビシッと決め、監督初采配を7-0の大勝で飾っている。

サッカーの監督経験はないが、指導者の経験は豊富。台湾プロ野球や、陸上の日本代表選手、プロゴルファーや競輪選手などを過去に指導してきた。

サッカーも体を使い、走ることが基本。チームにはまず、得意とするフィジカル面からアプローチ。選手が身体能力を開花させ、より一層発揮してピッチ上で生かすための方法を伝え、チームとして勝利に近づこうとしている。

実際に試合後、ともに映像をチェックし、走り方の改善を指示するようなシーンもあった。加えて、多彩な人脈を生かし、サッカーの戦術習得にも余念がないという。

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発起人の本田はブラジルで選手をしながら、教育者としてオンラインの「学校」を立ち上げたり、投資家としてデジタル通貨「KSK HONDA コイン」を発行したりしている。同じように、指揮官である武井の活動も、とにかく幅広い。

ツイッターのフォロワー数は本田の約108万人を上回る約152万人。社会問題に対し、迷わず声をあげたり、自身のYouTubeチャンネルで現役のトップアスリートと対戦してとんでもない能力を発揮し、結果を出している。

格闘家の那須川天心や朝倉海などとの「対決」にも勝利するなど、驚異の身体能力をみせつけている。

YouTubeをのぞくと、最新の「対決」はマエケンこと、ツインズの前田健太投手との「ガチ勝負」。バットを手にヘルメットをかぶって左打席でスイング。メジャーでサイ・ヤング賞の最終候補に挙がっている投手と対戦しているのだから、驚く。前田のYouTubeには投手と打者を入れ替わっての対戦もあるという。

「サッカー監督」という立場で語れば、まったくもって規格外だが、そこは「百獣の王」。すべてのフィールドで“生存競争”に勝ち抜こうという本能だろうか。

マエケンとの「勝負」から得た学びも、ピッチサイドから監督という立場で選手に注入できるとなれば、こんな監督は世界中探しても、いないだろう。

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クラブを立ち上げた本田は政治への発言などを通じ、“サッカー選手なのに”と批判されることを疑問視し、嫌う。サッカー選手という従来の枠をぶち壊すような活動を続け、年々そのボリュームをアップさせている。

その本田のクラブで監督を務めるなら、これくらいのスケールが必要なのだろう。

サッカー界で「百獣の王」といえば、セリエAの超名門、ACミランのズラタン・イブラヒモビッチ。

背中には巨大なライオンのタトゥー。フォロワー数、何と708万超というツイッターではたびたび、自身をライオンにたとえ、イブラ節で世界中にその存在を訴えかけている。

今は10部相当の「J10」でも、その先をたどっていけば、世界へとつながり、結果次第では何が起きるか分からないのが、サッカーの世界。

いつか日本の「百獣の王」と、世界のイブラとの対決も見てみたい--。

その前にまずは昇格を、となるのだが、こちらは心配なさそうだ。静かに結果を待ちたい。【八反誠】