川崎フロンターレの「史上最速V」は持ち越しとなった。勝てば2年ぶり3度目の優勝が決まる大分戦に0-1で敗れた。前半34分に主将のDF谷口彰悟(29)が1発退場となる反則でPKを与え1点を失った。10人で逆転を狙ったが、点を奪えなかった。22日にG大阪が浦和に引き分けるか負けると、J1では史上初となる試合日以外での優勝が決定する。

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試合終了時の光景は、思い描いていたものと正反対になった。スタジアムに起こった大きな拍手は、金星を奪った大分に降り注がれた。8月のホームでの対戦でシュート1本に抑えて完勝した相手に、まさかの敗戦。一気に優勝を決められなかった選手たちは、厳しい表情で立ち尽くした。鬼木監督は「多くのサポーターがアウェーに駆けつけてくれた中、テレビを通して応援してくれた人の期待に応えられず悔しい」と唇をかんだ。

これが優勝への重圧なのか。中2日の過密日程もあり、動きにぎこちなさが交じった。相手の積極的なプレスに、持ち味の流れるようなパス交換にもずれが生じた。前半34分にはDF谷口が背後へのロングボールを通され、ペナルティーエリア内で受けた大分MF野村を引っ張り倒した。PKを与え、1発レッドで退場。堅守を支えてきた主将抜きの戦いを余儀なくされた。

臨機応変に逆転を狙った。4-3-2のシステムをベースに5人の交代枠を駆使。右サイドバックにMF田中や途中出場のFW旗手を置くなどあの手この手で勝利でのVを追った。前半2本だったシュートは後半は5本。それでも最後までゴールを奪えず今季3敗目。指揮官は「1人少なくなっても最後まで点を取る姿勢を出してくれた。逆に1人減ってから強気になれた。このスポーツはメンタルが大きい」と振り返った。

22日にG大阪が引き分け以下なら、5試合を残しての最速Vが決まる。リーグ終盤になれば同日、同時刻開催が増えるが、5試合も残す時期は試合日が分散することがある。強すぎることに加え、コロナ禍で変則日程でもあり、試合開催日以外での優勝決定の可能性が生まれた。鬼木監督は「明日のガンバ(の結果)というより次のガンバ戦(25日)に向けて、が心にある。いい準備をしたい」。22日はチームは休養日の予定。王座戴冠を静かに待つ。【浜本卓也】