初出場の近江(滋賀)は、異色の経歴を持つ前田高孝(たかのり)監督(35)が率い、初の大舞台に臨む。同監督は滋賀・草津東を卒業後、04年にJ1清水エスパルスに加入。シンガポール、ドイツのクラブを渡り、けがの影響もあって4年で引退した。その後、バックパッカーとして東南アジアを旅行。タイの孤児院でサッカーを教えるうち、ボランティアとビジネスに興味を持ち、関学大に進学。教員免許を取得し、体育と英語を教えている。

再びサッカーに熱中したのは27歳、大学3年の時だった。関学大サッカー部ヘッドコーチとして学生に教える中で「無名校でゼロからやってみたい。自分を試したい」という思いが芽生え、就任5年目で選手権初出場に導いた。

MF森雄大主将(3年)は、前田監督と同じ滋賀・虎姫町(現・長浜市)で生まれた。地元のスターだった前田監督のことは、小学生の頃から知っていた。「前田監督のもとで、無名校が強豪校を倒して全国に行きたい」と近江を選んだ。

DF甲斐悠聖(3年)は2年生の時、思うようなプレーができずふてくされた態度をとった時期があった。それでも向き合ってくれ、最後の年にチャンスをくれた同監督に「まず全国1勝をプレゼントしたい」と、照れくさそうに笑った。

31日の1回戦は日大山形と対戦。野球部は春夏通算19度甲子園に出場しているが、サッカーでは無名校。初の大舞台で、その名をとどろかせる。【佐藤あすみ】

◆近江 1938年(昭13)創立の私立校。男子サッカー部の他、硬式野球部、男子柔道部、男女バレーボール部、男子卓球部、女子ハンドボール部、吹奏楽部を強化クラブに指定。野球部は春夏通算19度甲子園に出場。主なOBはプロ野球阪神の植田海、DeNAの京山将弥ら。部員数は91人。

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