29大会ぶり3度目の出場の堀越(東京A)が、1-1で突入したPK戦を4-3で制し、大社(島根)に勝ち、初戦突破を決めた。

前半5分にFW尾崎岳人(3年)が先制ゴール。ユニホームの下には、サポートメンバーに回ったDF馬場跳高(ひたか、3年)のユニホームを着用し、ゴールパフォーマンスで披露した。選手自らがメンバー選考、交代、練習メニューを考案する「今どき」のチーム。佐藤実監督(44)が提唱する「自発性のサッカー」で、3回戦では丸岡(福井)と対戦する。

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左手の甲には「5」と書いた。消えないように、油性マジックで。前半19分。前線で張っていたFW尾崎は、左サイド後方からの浮き球のスルーパスに抜け出した。小学校6年間、サッカーと同時に野球にも打ち込んだ。投手、内、外野を経験。「落下地点はある程度分かる」。相手GKとDFの間にワンバウンドしたボールにいち早く反応。頭で合わせ、先制点をもぎ取った。

テレビカメラの位置を確認すると、カメラの前でユニホームをまくった。背番号15の下には、もう1枚。背番号5のユニホーム。都大会準決勝で右足腓骨(ひこつ)骨折したDF馬場のものだった。元日、メンバー外となった馬場から「明日頼むよ」と連絡を受けた。そこから1時間の電話。「得点したらユニホームを掲げると話していた」と有言実行だった。馬場は既に手術に成功。軽めのジョギングはこなせるが、サポートメンバーとなった。

メンバー選考は選手たちが行った。部内には3年だけでなく、1、2年生を含めた「リーダー」が10人存在する。全員の意見をくみ上げ「リーダー」が佐藤監督に提案。選手交代、練習メニューも選手たちが決めている。“社員”である部員の心を“管理職”のリーダーが受け止め、“社長”の監督に判を求める。

アイデアの礎は「ジョホールバルの歓喜」の敵将。佐藤監督は、長野エルザ(現J3長野)のコーチ時代、監督だった男に刺激を受けた。日本代表がW杯フランス大会のアジア最終予選で戦ったイラン代表のバドゥ氏。「日本人は素直。言うことは聞く」という話の中で気付かされた。「上から言われたことをやるだけでは社会、会社に入った時に出来ない」。母校に戻り、12年前から選手主導のチームを作り上げ、29年ぶり3度目の選手権に戻ってきた。「今どき」のチームとして。このまま古豪復活といきたい。【栗田尚樹】

◆堀越 1923年(大12)創立の私立校。サッカー部は82年創部で89、91年度に全国選手権に出場している。野球部も甲子園出場経験がある。全日制のほかに体育コース、トレイトコース(旧芸能活動コース)がある。主な卒業生は松木安太郎氏。その他、数多くの芸能人がいる