FC東京がルヴァン杯決勝で柏レイソルに勝利し、前身のナビスコ杯09年大会以来となる優勝を果たした。

最古参のDF森重真人(33)は、チーム最後のタイトルだった天皇杯11年度大会優勝を知る唯一の選手。善戦しながらもタイトルに手が届かない時間が続き「万年中位」ともやゆされた。ついに訪れた歓喜の時。日刊スポーツに手記を寄せ、東京で戦い続けた11年間の思いを語った。

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プロでも、プロではなくても、スポーツの世界は2位では何も残らない。チームとして最後に優勝した天皇杯は11年度で、とうの昔のこと。あれから、今まで何をしていたんだろうと思う。それくらい、チームに優勝がないこと、森重真人にタイトルがないということを情けなく感じていた。

長谷川監督が来て、チームがこの1年、2年と優勝争いができている。今までの東京になかったこと。僕が11年間いる中でも大きな変化で、1ランク上のクラブになったと感じている。これまで東京の選手は、自分に甘さを与えてしまっている部分があった。だからこそ、優勝が見えるところに身を置く経験が必要だった。優勝の喜びも、逃す悔しさも、肌で感じないとわからない。12年から長谷川監督の就任までは、本当の意味での悔しい思いをしていない。というよりできなかった。ずっと中位にいて、なんとなく「今日の試合に負けた」「連勝できなかった」という悔しさだけ。物足りないサッカー人生だった。

昨季、リーグ最終節で負けて、目の前で優勝を許した。あの屈辱がチームにとって必要だった。あそこで本当の悔しさを味わったことが大切。勝つことがもっとも大切ですが、東京はもっと、今後も震えるような緊張感を経験していかないといけない。

東京に来て、11年目。隠さずに振り返れば、自分の夢だった海外の舞台を追いかけたい時期もあった。オファーの話も、だいたい過去に報道に出ていた通りかな。「自分も海外にいけばよかった」と後悔した瞬間も、「ここにいてよかった」と思うこともあった。最終的には、このチームへの思いが勝っていたからここにいる。

小さい頃から「こいつに勝つために練習しないと」とボールを追いかけてきた。単純な負けず嫌い。東京でも、CBとして第一線で活躍する、どれだけいい選手が入ってこようが自分が出るという思いで必死にやってきた。これまでクラブに迷惑もかけてきたけど、なにも恩返しなどができていなかった。選手にとってクラブに返せるものがあるとしたら、それがタイトルを取るということだと思う。

最後の優勝から8年間、本気でタイトルに挑み続けてきた。どの年も、監督や選手はすばらしかったと自信を持って言える。この8年間でタイトルに挑み、かなわずに去った選手たちもたくさんいる。この優勝を喜んでくれる人も、逆に悔しい思いを持つ人もいるかもしれません。いろんな人の思いが詰まったトロフィーが、美しく映りました。