自慢の「赤い壁」を崩されたものの、この4年間で3度目のベスト4。矢板中央の高橋健二監督(52)がつくりあげた伝統の「堅守速攻」スタイルは、今年も確かな存在感を放った。

全国の強豪の一角を担うまでの歩みは、苦難の連続だった。94年の監督就任時、部員は13人。県大会の1、2回戦で敗れ、練習試合を組むことも簡単ではなかった。そんな時に、新聞に出ていたブラジル留学制度に目がとまった。「何か新しいことをやらないと」。

休暇を取ると、約100万円の自費を投じ、単身ブラジルに渡った。学校側からは「何を考えているんだ」「何がブラジルだ」と怒りの声も飛んだが、「栃木から全国優勝を」という情熱を伝え続け、苦難の末に、1年生の希望者のみ現地でプロの指導を受けられる制度を構築。入学希望者は増え、04年には初めて選手権出場を果たした。

だが、そこが壁だった。攻撃的な戦いで大量得点を奪うも、大事な場面で失点を繰り返した。「敗因は自分自身だった」。指導者としての未熟さを認め、08年に元帝京監督の古沼貞雄氏に教えを求めた。名将の指導は、徹底した基礎の繰り返しだった。「小学生がやるような練習」に驚いたが、月日を重ね、目に見えてチームが変わっていく姿にさらに驚かされた。

1つの出会いから13年。部員は179人となり、全国でその背中を追われる存在に成長した。高橋監督には信念がある。

「うちには個の高い選手は集まらないが、普通の高校生でも努力すれば全国で勝ち上がれると証明したい。あのブラジルの挑戦があったから、基本の大切さが分かった。何でもチャレンジ。挑戦すれば道は開けると思うんです」

4度目の挑戦も、準決勝の壁は高かった。それでも、試合後には「また挑戦したい。ひたむきに、基礎のところからやっていきます」と言った。52歳の情熱は消えない。【奥山将志】

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