ヴィッセル神戸の秘密兵器が、17日のJ1リーグ湘南ベルマーレ戦で日本デビューした。

ケニア代表FWアユブ・マシカ(28)が後半21分、主に2トップの位置で途中投入された。時に2、3列目まで下がってプレーし、突然ゴール前へ姿を現す。14日の練習に合流したばかりで、ほぼぶっつけ本番だったが、実力の片りんを見せつけた。

後半26分にはスピードを生かし、右サイドを崩して切り返しから右足で強烈なシュート。惜しくもサイドネットに外れたが、十分な見せ場だった。その他にもMFサンペールの縦パスに反応し、FW古橋のシュートを演出したり。さらに相手を背後から追い、球を奪取する献身的なプレーまで披露した。

ケニア代表として26試合5得点の実績があり、これまでベルギーや中国、イングランドのクラブに所属し、昨年8月以降はフリーの立場でベルギーで自主トレをしてきた。アフリカ人特有の身体能力の高さに、167センチ、68キロと小柄でも抜群のスピードがある。シュートやパス技術もしっかりしている。

公式戦は昨年11月の代表戦以来、経験していなかった。新型コロナウイルスの影響による入国制限のため、来日は3月下旬と大幅に遅れた。本人はこの日のデビューについて「Jヴィレッジでの隔離期間中に練習していたし、チーム合流後も可能な限り練習をした。いい形で合流でき、仲間に歓迎されてうまくとけ込めた」と振り返った。

神戸はこれで5勝4分け1敗とし、17日時点で3位をキープし、上位争いに加わり続けている。ただ首位川崎フロンターレ、2位名古屋グランパスとの実力差は明らかにある。これを縮めるには攻守ともに、爆発力が必要だ。そこでマシカの加入は起爆剤になる。

そして、もう1人のキーマン、右大腿(だいたい)部の手術から主将のMFアンドレス・イニエスタ(36)がゴールデンウイークあたりに復帰する可能性がある。

左右に開いてゴール前に攻め込むのが得意なマシカ、既に今季6得点と絶好調のFW古橋亨梧(26)に、イニエスタが変幻自在のパスを供給。3人の関係が成熟すれば、常に複数得点は狙えるチームになる。

「人と接するのが好きで、日本ではまだ困ったことはない。まだ日本語を勉強する時間はあまりなく、これから。英語を話せる選手もいるので、仲間にとけ込むことができた」とマシカ。同じケニア代表の元柏レイソルのFWオルンガとは違うタイプだが、優勝争いに加わるには心強い助っ人が誕生した。【横田和幸】