鹿島アントラーズは川崎フロンターレに、ショッキングな逆転負けを喫した。リーグ戦に限れば、15年8月の勝利を最後に川崎Fから白星が奪えていない、まさに近年の天敵だった。その相手に、鹿島は立ち上がりからアグレッシブな戦いを見せた。プレスの寄せと攻守の切り替えが速く、ボールを奪ってからは縦に速い攻撃を続けていた。守備でも、DF町田浩樹はFWレアンドロ・ダミアンとの空中戦にも引けを取らず、右サイドを突破するMF家長昭博も封じた。先制点を取れば勝てる-。そんな戦い方だった。

後半16分にMFファン・アラーノの得点で幸先よく先制。しかし、昨季王者は一枚、上手だった。川崎Fの鬼木達監督は、流れが悪いと察知するや、後半38分にDF山村和也を中盤の底に投入。ピッチに入ってわずか20秒で、山村がセットプレーから同点弾。システムを変え、前線に圧をかける相手に、鹿島も体を張って守り続けた。だがロスタイムに、相手の20歳のMF宮城天のロングシュートに、誰も寄せられず、ぽっかりと穴があき、スーパーシュートを決められた。

90分のうち、83分までは鹿島の強さが目立っていたと思う。しかし、相手は、ロスタイムを含め11分で2発を仕留め、勝ち点3をものにした。鹿島の伝統は、流れが悪い時間を耐え、相手の一瞬の隙を突いて得点を奪い、その1点を守りきるしたたかな戦いだ。「最後にはいつも鹿島が勝つ」とも言われた。しかし、今回は終始、劣勢に見えた川崎Fが、終わってみれば勝ち点3。鹿島のお株の勝負強さを、川崎Fに見せられたように感じた。

試合後、DF安西幸輝は「チーム全体で最後まで走りきることができなかったと思いますし。1-0で締めるのが鹿島らしいサッカーだと思うがそれもできなかった。逆に言えば完敗だった」と振り返った。川崎Fとの差については「比較されるのは悔しいですけど」と前置きをした上で、こう分析した。「今は川崎の選手は90分通して、全員が戦っているし、球際も行く。1点取られても焦らず、チーム全体として動いていると思う。僕らもできる時間帯はありますけど、90分全部持つかどうかは話は変わってくる。そこが差かなと思っています」。

今季は結果的に川崎Fには2敗したが、今回の戦いは、今までで最も王者を土俵際に追い込んだように見える。この敗戦から、1歩の寄せ、90分戦い続けるサッカーの本質を、各選手が体感し、実践すれば、来季こそ、川崎Fへのリベンジとタイトルにつながるに違いない。【岩田千代巳】