目は真っ赤だった。充血していた。うっすら、涙が浮かんでいるようにも見えた。試合後のインタビュー。「勝ち点1をどのようにとらえるか?」と問われた。横浜FCの早川知伸監督は、グッと考え込んだ。約5秒間の静寂。「残念で仕方がありません」。7日のJ1リーグ第35節、アビスパ福岡との試合は、引き分けに終わった。「選手たちは良くやってくれたと思っています。自分の力不足。これが全てかなと思っています」。懸命に言葉を振り絞った。

マスクで顔を覆っても、隠しきれなかった。インタビュー後に行われた報道陣向けのズーム取材。画面越しでも、表情に違和感があった。「引き分けという結果になってしまい、強く責任を感じています。多くのサポーターが福岡まで来てくれる中、勝利に持っていけることが出来なかったこと、全て自分に責任があると感じています」。何より、声がいつもと違った。

敵地の福岡に乗り込んだ。試合前には「自分たちには勝つしかないし、勝つ使命がある。そこだけは信じてやろう」と選手を奮い立たせた。後半10分に待望の先制点。後半45分まで、1-0。勝利は目前だった。悪夢は、1分後に訪れた。オウンゴールで勝ち点「2」が消失。報道陣から「最後に失点。ここを改善した方がいいとかはあるか?」と問われると、間髪入れず「分かりません」と返答。涙をこらえているようにも感じた。

勝てば、最下位脱出だった。敗れたことで、勝ち点2分を取りこぼし、次節にも他チームを含めた勝敗次第で、降格が決まる瀬戸際に追い込まれた。早川監督は「残り3試合。可能性ある限り、最後まで戦うことを誓います」と言った。3連勝しても、降格の可能性がある。前を見続けるしかない。そう語る、指揮官の真っ赤な目が忘れられない。奇跡の逆転残留を成し遂げ、歓喜の涙をこぼして欲しい。【栗田尚樹】