今季のJリーグのデータを独自の視点で分析して各賞を選出する、恒例「ニッカン・フットボール・アウォーズ」を3回にわたって連載します。第1回は攻撃編。日本代表の横浜FW前田大然(24)が、多彩な得点パターンで初の得点王に輝きました。1シーズンに右足、左足、ヘッドで、それぞれ6ゴール以上はJ1史上5人目。サッカーにおける「三種の神器」を駆使し、ゴールを量産しました。【構成=石川秀和】

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実に器用にゴールを積み重ねた。今季は36試合に出場し、リーグトップタイの23得点。その得点部位の内訳は右足10、左足7、ヘッド6と、利き足の右足だけでなく、左足と頭でもそれぞれ6ゴール以上を挙げた。その3つの部位すべてで年間6ゴール以上は難易度が高く、09年の元日本代表FW前田遼一(磐田)以来、12年ぶり5人目。武器のスピードとともに、シュート技術の高さも示した。

「ゴールへの意識がより一層、強くなった」と、持ち味を発揮できずに終わった東京五輪の悔しさを糧に、後半戦だけで2度のハットトリックを記録。11月の東京戦では左足、右足、頭でゴールを決める「パーフェクト・ハットトリック」を達成した。

特に今季は頭でのゴールが急増。「相手の怖いところにしっかり入っていけた」と、そのスピードを生かして相手DFより先にクロスに合わせた。結果、173センチの小柄なスピードスターは、188センチの湘南FWウェリントンと並び「ヘッド得点王」に輝いた。

1試合のスプリント数は常に上位で、自身J1初のハットトリックを達成した8月の大分戦では史上最多の64回をマーク。50メートル5秒8というトップスピードの中でもボールコントロールは乱れず、枠内シュートは今季最多の44本を数えた。

24歳での得点王は02年の元日本代表FW高原直泰(磐田)らの23歳に次ぐ若さでのタイトル。それでも本人は至って謙虚で「チームのために走るというのをやってきた。それが結果につながって良かった。チームメートに感謝したい」。Jリーグ屈指の韋駄天(いだてん)は、日本代表でも主力を張れるだけの器量がある。