J2・18位のヴァンフォーレ甲府が、J1・5位の鹿島を下し、下克上で初の決勝進出を果たした。前半37分にFW宮崎純真(22)がゴールを奪い、無失点でしのいだ。J2チームが決勝に進出するのは14年の山形以来、4チーム目。リーグ戦では6連敗中で10試合勝利なしと苦しんだが、天皇杯では札幌、鳥栖、福岡、鹿島を破ってタイトルに王手をかけた。もう1試合は広島が延長の末、2-1で京都に勝った。決勝は16日、横浜市の日産スタジアムで行われる。

   ◇   ◇   ◇

大波乱を起こした。J2・18位に低迷する甲府が敵地カシマスタジアムで、J1・5位の鹿島を破った。

クラブ史上最大のジャイアントキリングで初の決勝進出。試合終了の笛が鳴ると、選手、スタッフたちはピッチ上で抱き合って、喜びを爆発させた。

鹿島対策で5バックで臨み、前半37分、FW宮崎純真(22)が最終ラインのDF浦上のロングボールに抜け出し、相手GKと1対1になり冷静にネットを揺らした。後半からは圧力をかけてきた鹿島に防戦一方になったが、クロスボールを果敢にはね返す。シュート数は相手の18本に対して6本。必死で守り切った。

決勝点を決めた宮崎は、居残り練習でDF浦上と1本のパスから抜け出し得点する練習を重ねてきた。鹿島DF関川とは多摩ジュニアユースの同級生。関川との駆け引きでうまく背後をとった。「ファーストタッチも冷静にトラップできた」。関川との“対決”に「裏を取ろうと思っていた。チームとしても狙っていたので良かった」と振り返った。

J2のリーグ戦では6連敗中で、ここ10試合は勝ちなしで18位と苦しむ。シーズン途中には20年からキャプテンを務めていたMF新井が週刊誌報道などもあり退団。苦闘のシーズンでの初の決勝進出に吉田達磨監督(48)は「しのぎきる、守り切る…。リーグでは何度も失敗しているが、カップ戦はリーグ戦より割り切りやすい。今季はあと、2週間で終わるが、成長を見て取れた」と目を細めた。

天皇杯ではJ1勢に4連勝して、J2クラブとしては14年の山形以来の決勝進出。16日の決勝前、9日にはリーグ戦のホーム岡山戦がある。「ホームで勝ちたい。天皇杯はチャレンジ。この歓喜とエネルギーを、山梨で分け合えるような戦いをしたい」と吉田監督。まずはリーグ戦で11戦ぶりに勝利し、初の頂点へ弾みをつける。【岩田千代巳】