来季のJ1から県勢クラブが史上初めて姿を消すことになった。清水エスパルスは今季17位でクラブ史上2度目のJ2降格。最下位で転落した磐田と史上初の「ダブル降格」の屈辱となった。各クラブ2回ずつ、計4回にわたって連載する「J1消滅の真実」清水編は最終回。チームが一枚岩になり切れなかった原因を考察する。磐田編は来週17、18日にお届けする。

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<選手とスタッフの「飽和状態」>

今季の清水は「チーム」ではなく、ただの「グループ」だった。残留を争うライバルが終盤で勝ち点を積む中、清水は9月以降7戦勝ちなしで降格した。一時は11位まで浮上したチームが失速。空中分解とまではいかないが、残留争いを戦い抜く上で大事な一体感や結束力は足りなかった。

要因は2つある。1つ目は選手とスタッフの「飽和状態」。外国籍選手は登録枠5人を上回る8人が在籍していた。ゼ・リカルド監督(51)の就任を機にブラジル人スタッフ3人も新たに加入。平岡宏章前監督(53)をサポートしていた日本人スタッフらの「居場所」はなくなった。練習場で新体制と旧体制が混在する光景は異様だった。

<大所帯引っ張る船頭がいない>

2つ目は大所帯を引っ張る船頭がいなかったことだ。今季は日本代表GK権田修一(33)が主将に就任。試合でのビッグセーブで何度も救われた。だが、真のリーダーとはいえなかった。

チームを束ねる立場でありながら、練習中に感情的になることもしばしばあったという。降格決定後、権田は言った。「僕が思っていたチームの引っ張り方とクラブが求めるやり方がリンクしなかった」。

今季は権田とその他選手という構図になっていた。意見の食い違いやサッカー勘が違うことは当たり前。その状況を打破するべく、互いに意見をぶつけ合いながら進むのが本当のチームだろう。一丸で勝つためにピッチ内外で腹を割った話し合いができていたのか-。その環境はなかった。

指摘し合っている“つもり”では本当に苦しい時にほころびが生まれる。降格が決まった札幌戦が象徴的だ。2度のリードを守れずに敗れた。MF白崎凌兵(29)は「細かいところが結果として大きく出た」と唇をかんだ。今季、ロスタイムの失点で勝ち点が変わった試合は8試合。最大で勝ち点12を失った計算だ。課題だった試合終盤での戦い方は改善されなかった。白崎が言う「細かいところ」を真剣に話し合い、徹底できていれば結果は変わっていたのかもしれない。

来季はJ2。監督や選手だけの力でJ1復帰を成し遂げるのは容易ではない。フロントやスタッフ、スポンサーやサポーターも含めた清水に関わる全ての人が「チーム」にならなければいけない。来季こそ、クラブの真価が問われている。【神谷亮磨】