浜松開誠館が4年ぶり2度目の栄冠を手にした。藤枝東に2-0で完勝。技ありの2発で名門を沈めた。前半にMF松本大樹(3年)が直接FKを決めて先制すると、後半にはMF岡田海人(3年)が右足ミドルで追加点。県総体後に急成長したチームは7月以降の公式戦で12戦負けなし(11勝1分け)で頂点まで駆け上がった。全国選手権(12月28日開幕)の組み合わせ抽選会は21日に行われる。

勢いだけじゃない本物の強さを見せつけた。浜松開誠館は松本と岡田のゴールを守り切り、歓喜の瞬間を迎えた。18年以来2度目の頂点。ピッチでは選手同士が抱き合い、喜びに浸った。青嶋文明監督(54)は「選手がよくやってくれた。そこに尽きる」。初優勝した4年前のインタビューで涙した指揮官の表情は優しい笑顔だった。

5月の県総体では準々決勝で磐田東にPK負け。同じ西部地区のライバルが優勝したことで意識が変わった。MF前田康尋主将(3年)は「このままでは勝てないと思った」。危機感を募らせた選手たちが取り組んだのは主体的にプレーすること。指示されたことをこなすだけでなく、課題克服のために意見をぶつけ合った。

選手間ミーティングを増やし、映像を使った相手の分析も選手だけでやることも多かった。青嶋監督は「自分たちで考えるようになってからの成長が大きかった」。指導するスタッフの意識も変えた。選手権で勝つだけのチーム作りはせず、個々の長所を伸ばすことに重きを置いた。

夏以降はシステムを3バックに固定。戦い方を左右する大きな決断をしたのも選手の発案だったという。MF今井航(3年)は「やることがはっきりしたことで迷いもなくなった」。7月以降のプリンスリーグ東海は8戦負けなしで首位を死守。負けなかった自信が今大会で確信に変わった。

勝つことにこだわってきた同校は「軍隊」とやゆされることも過去にはあった。だが、その姿はもうない。監督が選手の自主性を信じ、選手がその期待に応える好循環で一体感も芽生えた。前田主将は「自分たちの力を証明できた」と胸を張った。実りの秋。選手の手でつかみ取った4年ぶりの優勝旗が最大の収穫だった。【神谷亮磨】

◆浜松開誠館 1924年に誠心高等女学校として開校。1998年に現校名で中高一貫・男女共学となる。サッカー部は05年創部で、全国選手権出場は1回(18年度大会)。主なOBは清水MF竹内涼や磐田DF松原后ら多数。部員数104人。所在地は浜松市中区松城町207の2。