日大藤沢が湘南工大付を延長戦の末に下し、3年ぶり6度目の全国切符を手にした。同じ藤沢市に校舎を構えるチーム同士の「ダービーマッチ」。インターハイ予選決勝では1-2で敗れていただけに、その雪辱を果たした。

神奈川の高校サッカーの聖地、三ツ沢。決勝の大一番で勝負を分けたのはセットプレーだった。

前半37分、CKからDFアッパ勇輝(3年)のヘディングシュートで先制した。来季の清水エスパルス入団が決まっている198センチの超大型FW森重陽介(3年)が徹底マークされる中、その裏をかいて背後から飛び出した。相手をかく乱する狙い通りのプレーだった。

勝利目前の後半ロスタイムに湘南工大付MF橋山翔太(3年)に同点ゴールを奪われたものの、延長戦でも再びCKから勝ち越しゴールが飛び出した。

延長前半ロスタイム。キッカーは正確な左足キックが持ち味のDF宮崎達也(3年)。右サイドから左足で鋭く巻いたボールは、湘南工大付GK岩崎翔(3年)のセーブも及ばず、直接、対角のゴールネットへと鋭く突き刺さった。

相手の追い上げムードが高まっていただけに、まさに値千金の一撃。この勝ち越しゴールで勢いに乗った日大藤沢は、延長後半にも途中出場したMF吉田亘之介(3年)が右サイドの角度のない位置から鮮やかなシュートを決め、勝負を完全に決めた。ピッチ、ベンチの選手は一体となって歓喜を爆発させる。緑のピッチに桜カラーが映えた。

勝ち越し点を決めた殊勲の宮崎は「狙っていたわけではないですが、触ればゴールになるよう意識して蹴った」と満足そうに振り返った。正確なキックを武器とするチェルシーのマルコス・アロンソや、元日本代表の中村俊輔、太田宏介のプレー動画を日ごろからチェック。磨きを懸けてきた得意のプレーが、ここぞの場面で生きた。

佐藤輝勝監督も「うちはセットプレーが持ち味」というように、精度の高いキッカーに加え、森重、アッパら高さのあるヘディングシュートを打てる選手がそろう。

ガーナ出身の父を持つアッパは、身長178センチと大柄ではないが、昨年はU-17日本代表候補にも選出されるなど高い身体能力が持ち味だ。この日は右サイドバックで先発し、後半途中からCBに入り、躍動感あふれる空中戦を披露した。

参考にしている選手は元スペイン代表のプジョル。だという「同じくらいの身長(プジョルは180センチ)なのにヘディングが強い。試合前には動画でプレーを見て、いつも参考にしています」。その闘志あふれる姿も手本に、守るだけでなく得点も取れるディフェンダーを目指している。

個性豊かな選手がそろい、日大藤沢が掲げる目標はズバリ「全国制覇」だ。今夏のインターハイ(全国総体)は、予選のレッドカードでアッパ不在もあり、まさかの1回戦敗退(1-2丸岡)と苦杯をなめた。それだけに、捲土(けんど)重来の思いは強い。

ことしの冬は、ピッチにサクラ旋風が吹き荒れそうだ。【佐藤隆志】