京都サンガがホームで1-1とJ2ロアッソ熊本と引き分けて、J1残留を決めた。

同点で迎えた後半ロスタイム、元ナイジェリア代表FWピーター・ウタカ(38)が、勝ち越しを狙う相手シュートを顔面で阻止。ドローの場合は上位が勝者扱いになるPOの規定により、今季12年ぶりにJ1復帰を果たしていた16位京都が、5度目の降格を免れた。

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いつもは得点が仕事のFWウタカが、この瞬間だけはDFになったという。

同点で迎えた後半ロスタイム。自陣のこぼれ球から熊本FW平川に至近距離でシュートを打たれ、ゴール前にいたウタカは顔面を突き出してブロック。直後の相手シュートも右ポストに当たり、勝ち越しを許さない。その執念が奇跡的な局面を呼び続けた。

「顔をそむけるのは簡単。私の経験値で何をするのが最善か考えた」。シュートが顔面に当たり「口の中が切れた。京都をJ1に残すため、素晴らしいプレーができた」。今季チーム最多9得点を稼いだ男は、この日は得点以上の価値のある守備で貢献した。

曹貴裁監督は会見で、8月に亡くなったクラブの生みの親、稲盛和夫さんの「正しいことをやりなさい」の教えを口にし、「努力をすれば、勝利がついてくるという王道のプロセスをやっていくことが大事」と、攻守に勤勉だったウタカら選手に「敬意を表したい」とコメントした。

京都でJ2得点王にも輝いたウタカは今季限りで退団の可能性があり、来季編成は流動的だが、続投予定の指揮官の下、このPOを経験して新たな強さを手に入れた。【横田和幸】

○…J2ロアッソ熊本は京都と引き分けてJ1初昇格を逃した。後半23分に広島から期限付き移籍中のDFイヨハが2戦連発となるヘディング弾で同点。ボール支配率で上回り、シュート数も京都を1本上回る9本と健闘したが、あと1歩及ばなかった。1年契約で来季続投の大木監督はこの日の経験を生かす方法を問われて「いい経験を踏んだなら生かせるが、負けて、こんな経験忘れた方がいい」と悔しがった。