「ジョーカー」を忘れるな。全国高校サッカー選手権は4日、準々決勝4試合が行われる。

ドイツ1部・ボルシアMGへ加入するFW福田師王(しおう、3年)擁する神村学園(鹿児島)は、前年覇者の青森山田と激突。注目は世代NO・1ストライカーに集まるが、陰の立役者に目を向けたい。

1年生にして背番号10をつけるMF名和田我空(がく)だ。初戦は前半22分から、3回戦は後半から途中出場。今大会の計4得点は、全て名和田がピッチに立ってから奪っている。栢野(かしわの)裕一監督代行は「ジョーカー的な役割でゲームにリズムを持ってきてくれる。度胸もすごい」と評した。具体的にサッカーはどう変わるのか。

2日に行われた日大藤沢(神奈川)戦は、前半にサイド攻撃が生きなかった。その影響もあってか、チームの心臓役でセレッソ大阪入団が内定しているMF大迫塁(3年)がサイドに寄りがちだった。バランスが崩されるなか、後半に出場した運動量の豊富な名和田が左サイドで起点を作ることで、大迫はピッチの中央でもプレーできるようになった。大迫は言う。「前半は自分がサイドに流れすぎだなって思ってたけど、我空が左で展開を作ってくれました。ゲームにも落ち着きが出ました」。現に日大藤沢戦は左サイドから仕掛け、得点を奪った。当然、名和田も絡んでいた。

前線にいるFW福田も同意だ。「縦への突破ができる。活性化しますよね。自分で仕掛けてくれるし、良いところにボールを出してくれる」。同じだいだい色のスパイクを使う後輩に全幅の信頼を寄せている。

身長は168センチと小柄だが、足元の技術、立ち回る能力は全国でも引けを取らない。MF大迫、FW福田はチームの2枚看板だが、最強の切り札もいる。青森山田戦のキーパーソンは、16歳の名和田かもしれない。【只松憲】

 

◆名和田我空(なわた・がく)2006年(平18)7月29日、宮崎・都城市生まれ。宮崎・木之川内SCでサッカーを始め、神村学園中-神村学園高。主将だった中学3年時は全国中学校サッカー大会で全国制覇。5試合で驚異の10得点をたたきだした。22年10月にU-16日本代表入り。利き足は右。50メートル走6秒9。168センチ、60キロ。