この秋、TBSにサッカー番組が誕生する。同局系で長年愛された「スーパーサッカー」の終了から2年半。15日から「KICK OFF！ J」（日曜深夜0時58分）が始まる（初回は深夜1時28分スタート）。番組MCを務めるのは、同局齋藤慎太郎アナウンサー（26）だ。元横浜F・マリノスユースで、立教大学までサッカーを続けた本格派。入社4年目で早くも夢がかなった。プレーする側から伝える側に。サッカー愛を全力でぶつける。全3回の1回目は、番組スタート直前の思いを聞いた。
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約1000倍とも言われるアナウンサー試験を突破に導いたのは、16年間続けたサッカーだった。「サッカーの実況がやりたい」。「サッカー番組に携わりたい」。齋藤アナは、さわやかな笑顔でそう訴え続け、その熱意が実った。
入社1年目から情報番組などに出演する傍ら、先輩らに実況の指導を仰いだ。着実に夢に向かっていた21年3月、「スーパーサッカー」の終了を知った。番組にはほとんど関わることができなかった。もどかしかった。しかし、年次を重ねるにつれてピッチリポーターなどサッカーの現場に携われるようになった今年4月、Jリーグがバックアップする「KICK－」が全国で始まった。TBSでは、スポーツ番組「S1」（土、日曜深夜0時）の1コーナーだったが、今秋から独立することが決まった。
「日曜日（8日）にリハーサルをやって、『あ、ようやく始まるんだな』っていう実感が今湧いてきたところですかね。サッカーが好きな人も見られるし、“にわかファン”というかサッカーを知っているけど、そんなに詳しくないよっていう人ものめり込んで見られる番組なんじゃないかなと思いますね。サッカーの試合をストレートに見るだけじゃなくて、いろんな方向からサッカーっていうスポーツ、Jリーグを見ていくことができる番組なんじゃないかなと思っています」
サポーターの表情から、ロッカールームの中まで。さまざまな角度からサッカーというコンテンツを掘り下げる。「スーパーサッカー」のスタッフも多く在籍しており、同局が培ってきたサッカー番組のノウハウを引き継ぎつつ、新境地を開拓していく。「全く違う番組にしなくてもいいんじゃないかなって私は思っています。『スーパーサッカー』ってすごく歴史のある番組なので、良い部分、継承すべき部分というか、リスペクトすべき部分をしっかりとしたい。そういうものを残しつつ、ちょっとでも広がっていけたらいいなっていうのと、僕はサッカーをやってましたし、その視点を伝えられたらなっていうのは1個ありますね」と自分色も出していく。
サッカーを突き詰めてきたからこそ伝えられることがあると信じている。「今、僕の世代の日本代表が活躍していて、全員が全員やったことあるわけじゃないですけど、そういう人たちのプレーをちっちゃい頃から見てたりもしたので、この選手はこうやって変化したんだよとか、自分がサッカーやっていた部分から、ただのパス1つにしても意図があったりとか、そういうのを言葉で伝えられたらいいなって思いますね」とうなずいた。
自身は横浜F・マリノスユース時代、ほとんど試合に絡めなかった。サッカーを楽しいと感じることもいつしかなくなっていたという。思うようにいかなかったサッカー人生だった。しかし、大学まで続けたことで、今の仕事につながった。「自分のサッカー人生はなかなか楽なもんじゃなかったです。16年の厳しかったものを今、還元する時が来たなという感じですね。辞めなくてよかった」。
地上波でサッカー番組が減り、スポーツニュースの中でサッカーが取り上げられる尺も増えない中で、新たにサッカー番組が誕生することに価値がある。
「いろんなサッカー番組がなくなっていく中で、流れと正反対の新たに出来上がるっていうところは、いちサッカーファンとして、非常にうれしいです。民放でやるからには、いくら僕がサッカーやってたからとはいえ、プロフェッショナルな方に振れちゃいけないと思っている。でも、だからと言ってサッカー好きな人たちを全部捨てていいわけもない。当然その人たちが僕としてはメインだと思っている。サッカー好きな人がサッカー見るの当たり前なので、その人たちに面白いと思ってもらいながら、サッカーを知らない層の人たちにも楽しんでもらえる放送がベスト。『広い層に伝える＝サッカーファンを捨てていい』とは絶対思ってないので、むしろそっちを大事にしないとそこだけは絶対にぶらしたくないです」
強い覚悟をもって、日本サッカーの発展に寄与していく。【佐藤成】
◆「KICK OFF！ J」…関東J1の8チームを中心に、J2、J3チームも含めてさまざまな情報を届ける。30周年を迎えたJリーグのさらなる発展を推し進めていく。齋藤アナと御手洗菜々アナがMCを務め、JリーグOBの解説者をゲストに迎えて番組を進行していく。
