山梨学院大サッカー部女子が、創部10年目で悲願の日本一を手にした。第32回全日本大学女子選手権大会の決勝が1月6日、東京・味の素フィールド西が丘で行われ、早大(関東2位)を延長戦の末に3-2で下し、初優勝を飾った。2014年(平26)に横森巧総監督(81)のもとで創部し、着実にステップアップ。昨年の第31回大会準優勝を糧に進化を続け、村上裕子監督(39)が推し進める選手主体の「自立サッカー」が花開いた。

優勝カップを掲げる横森巧総監督
優勝カップを掲げる横森巧総監督

真価が問われる展開となった。決勝前半、山梨学院大は常に先手を取られた。U-20日本代表の早大MF大山愛笑(あえむ)を止められず1-2とリードを許した。だが下を向く選手は誰もいない。「大丈夫だよ」。失点のたびに選手たちが自然と集まり意見交換した。この姿こそ村上監督が目指した「自立」だった。


ハーフタイム、おのおのの課題をさらに出し合う。「うまいけどリスペクトしすぎちゃ駄目」「相手3枚のDFラインの回しに前から駆けよう」。アイデアを出尽くしたところで村上監督がまとめる。監督主導の上意下達はない。


実践するのはビジネスなどで円滑に会議を進める「ファシリテーション(facilitation)」という技法。フォーメーションを4-1-4-1から4-3-3へ変更し、前への積極性を出した。この話し合いが奏功する。

初の日本一を振り返る村上裕子監督
初の日本一を振り返る村上裕子監督

敵陣に押し込む時間を長くすると、後半40分にDF嶋田華のFKが決まり同点。そして延長前半5分、相手ゴール前へ押し込むと、こぼれ球を途中出場のMF大住六花が左足シュート。相手に当たりゴールへ飛び込む決勝点となった。MF甲斐碧海主将は「去年は悔しい思いをしたので勝ち切れて良かった」と喜んだ。


昨年の大会は決勝で東洋大に敗れて準優勝。その悔しさをバネに「チャレンジャー」として今季は1戦1戦、目の前の勝ちにこだわった。守備範囲の広いGK大原ももを起点とし、11人の個性を的確に組み合わせたのが「山学スタイル」。


関東1部リーグで試行錯誤を重ね、そこで出てきたものを分析した。甲斐主将は「自分たちで話し合いながら、お互いのポジションを見ながら作り上げた」という自慢のサッカーだ。

決勝で同点FKを決めたDF嶋田華
決勝で同点FKを決めたDF嶋田華

村上監督は「関東リーグの22試合が成長につながった。だからインカレでも恐れることはなかった」。進化は如実に現れた。「どこまで規制をかけ、どこまで自由を与えるか。考える力とこちらの求めるものがうまくかみ合った」。関東とインカレの2冠は積み重ねのたまものだった。


日本一の達成感はあったが、むしろ沸き上がってきたのは安心感だった。「今年勝てないといつ勝てるのか、のしかかるものがあった」。スタッフと選手が一体となり、創部10年目で最高のチームが出来上がった。【佐藤隆志】

4年生3選手Wリーグへ DF栃谷&MF甲斐&MF上田

4年生の3選手がWEリーグに加入する。DF栃谷美羽はちふれ埼玉へ、MF甲斐碧海とMF上田佳奈は大宮入り。サイドバックの栃谷は正確なキックとオーバーラップが持ち味で、攻撃的MFの甲斐とボランチの上田は攻守のかじ取り役として活躍した。


現在12チームのWEリーグにはOG4選手が在籍しており、合計7人となる。甲斐は「大学とはレベルが違ってくるが、自分の良さを出して試合に絡みたい」と誓った。2月から合流予定。


【4年】栃谷美羽(とちたに・みう)

■ちふれASエルフェン埼玉

■ポジション MF・DF

■生年月日 2001年10月20日

■身長/体重 166cm/56kg

■出身地 千葉県

■所属 舞浜FCファルコンズージェフユナイテッド市原・千葉レディースU15-修徳高-山梨学院大

【4年】甲斐碧海(かい・まりん)

■大宮アルディージャVENTUS

■ポジション MF

■生年月日 2001年9月9日

■身長/体重 159cm/51kg

■出身地 東京都

■所属 五砂FC-ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-15-ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18-山梨学院大

【4年】上田佳奈(うえだ・かな)

■大宮アルディージャVENTUS

■ポジション MF

■生年月日 2001年6月29日

■身長/体重 154cm/55kg

■出身地 埼玉県

■所属 尾山台イレブン-浦和レッズレディースジュニアユース-日ノ本学園高-山梨学院大


1年生伊藤4戦6得点V原動力

初優勝の原動力となったのが、1年生FW伊藤琴音(静岡・常葉大橘)だ。2回戦の神奈川大戦で2得点すると準々決勝の明治国際医療大戦、準決勝の東洋大戦、決勝の早大戦と4試合連続の6得点を記録した。


156センチと小柄ながらスピード豊かなプレーが持ち味。村上監督は「うれしい誤算」と期待以上の活躍を喜んだ。伊藤は「全試合で得点できたのは良かったし、日本一になれてうれしかった。こぼれ球はいつも意識しています」。


今後は相手からのマークが厳しくなりそうだが「大きなセンターバックにも勝てるよう、フィジカル面を磨いていきたい」と意欲満々。1年生だけに「ここから勝ち続けて4連覇したい」と大きな夢も口にした。

全試合で得点を決めた1年生FW伊藤琴音
全試合で得点を決めた1年生FW伊藤琴音

◆山梨学院大サッカー部女子2014年(平26)に創部、関東大学3部リーグ加入。初代監督は田代久美子氏(14~19年)。23年に同1部リーグ初優勝。全日本大学選手権は20年に初出場し、今回で4年連続の4度目。部員は大学リーグのサッカー部、クラブチーム併せ66人。部の指針は「大学日本一を目指す」「世界に通用する選手の輩出を目指す」「サッカーを通じて人間力の向上を目指す」。スローガンは「Now is the time! 今がその時だ!その日その時その瞬間に全力を注ごう」。横森巧総監督、村上裕子監督。