鹿島アントラーズのFW知念慶(28)が、ボランチに抜てきされた。MF柴崎岳の負傷離脱や、佐野海舟のAFCアジアカップ(アジア杯)日本代表招集などの中、中盤で強度の高い守備を見せた。攻撃でも、テンポよくボールをさばき、FWの裏や、サイドへ展開するパスを出しリズムをつくった。「後ろでボールを回しながらリズムを作るところは、鹿島が足りない部分があったと思っていたので。そこは意識して、自分の中ではやれているかなと」と振り返った。

ボランチは中学時代以来。宮崎キャンプ中の練習試合で柴崎が負傷し、ポポビッチ監督が「3本目に出る選手がいないから1回やってみてくれ」と抜てき。知念のプレーに「ブラボー! ボランチだ」と、新たな挑戦が始まった。

知念は「自分もビックリしましたもん」と笑い、指揮官の「ブラボー」に「うれしいですよね。意外とやれてるんだと」と士気も高まった。練習中でも、監督が求めていることをやると「ブラボー」。逆に「これはやるな」というプレーも「ナンデ?」と日本語で叱責(しっせき)する。

知念は「監督がはっきり言うので。練習中に監督の話を聞いて、実行していれば、わりと試合には絡めるのかなという感覚はあります」と手応えを口にする。

監督が叱責(しっせき)するプレーは、突破したにも関わらず後ろにボールを下げたり、前への選択肢を持たなかった場合だという。「基本的には、ボールを動かしながら相手のラインを1つ突破したら、すぐゴールに最短距離で向かう。縦パスがズレても、前を選んでいれば“ブラボー”です」。前へボールが出れば、周囲も連動して攻撃に向かう。監督がやるべきことをはっきり伝えることで、前にボールが入れば、各選手が矢印を前に向け、連動した攻撃を展開。昨季のような、迷いから攻撃が停滞する場面が少なかった。

同監督は、知念のボランチ抜てきに「私の持論は、いい選手はポジション関係なくプレーできる。大事なのは知念が受け入れて楽しんでプレーしたことがいいプレーにつながっている。ボランチを始めて間もないですが、非常に良さを出してくれている。この時点でみせてくれているものは満足」と合格点。今後の伸びしろに「FWでやってきたゴールに関わるプレーは増やしてほしい」と期待を寄せた。

知念自身も「今は覚えることが多くて、新鮮で楽しい。子供の頃を思い出しているような感じです」と目を輝かせる。「でも、J1のトップレベル相手にはまだ、通用するレベルではないと思っているので。ここからもっと、(柴崎)岳くん、(佐野)海舟から盗めるものは盗んで。ここからJ1でもやっていけるように」と新境地開拓へ意欲を見せた。

試合はMF樋口雄太の得点でJ2水戸ホーリーホックを下し、ポポビッチ監督のカシマスタジアム初陣を飾った。【岩田千代巳】