16年ぶりのJ1を戦う東京Vが、FW染野唯月(22)の2ゴールで土壇場で追いつき、京都と2-2で引き分けた。ホームサポーターの前で2008年10月18日の大宮戦(1-0)以来、15年5カ月11日(5641日)ぶりの勝利とはならなかったが、ホームの味スタは劇的な引き分けに沸いた。開幕から5試合を終えて3分け2敗となった。

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エースが土壇場で意地を見せた。0-2の後半35分、FW山見が倒されて得たPKを染野が決めて1点差。ゴール裏のサポーターが沸く。反撃ムードは高まった。U-23代表戦から中3日という状況にも懸命に走った。そしてロスタイム3分。右サイドのMF斎藤からグラウンダーのクロスが入る。DFの背後から滑り、必死に伸ばした左足で同点弾を押し込んだ。

今季初ゴールから13分で2得点。敗色濃厚だったチームを救い、勝ち点1をもたらした。「狙い通りのゴールでした。得点することで自分の価値を示さなければならない」と胸を張った。城福監督もエースの2点にほくそ笑んだ。終盤まであきらめず、誰よりもボールを追い、先頭に立ってディフェンスをしたのが染野だった。「だからこそ最後に彼のところにボールが出た。ひと皮向けた姿を見せてくれた」。自分でなくチームのために戦う。指揮官が求めるマインドをわが物とした。

京都から期限付き移籍中のFW木村、MF山田楓が契約上の問題で欠場。ここまでの4試合で挙げた5点中、2人で4得点を記録する主力が不在となる中で、染野に引っ張られて価値ある勝ち点1を手にした。

平均年齢24歳の若いチーム。城福監督は「成長するためには自信がキーワード」と言う。今季はまだ未勝利も、着実に成長の階段を上っている。「もう1点取れる場面があった。僕のゴールで勝たせられるようにしたい」。J1史上最長となる16年ぶりのブランク勝利は、やはり染野の肩にかかっている。【佐藤隆志】