東京Vの城福浩監督(63)を巡る因縁の「東京ダービー」が13日、16年ぶりに明治安田J1の舞台で実現する。前回08年の対戦時は東京の監督だった男は、何の因果か、強烈なライバル心をむき出す古巣と対峙(たいじ)する。そして今回のダービーの裏には「愛弟子」東京DF長友佑都(37)との約束もあった。なお3万人以上の観衆が見込まれる一戦は13日午後4時、味スタで行われる。

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16年の時空を越え、師弟が相まみえる。東京ダービーを目前にして城福監督が言った。「2008年にチームメートとして東京ダービーを戦った。あの場にいた当事者で言えば(今回は)自分と佑都以外、誰もいない。そういう意味では感慨深いものがある」。

東京の監督に就任した08年、明大サッカー部を退部して長友がやってきた。プロ1年目。その才能を見抜き開幕戦からレギュラーに抜てき。東京ダービーにも出場させた。2年半後、自らのもとからイタリアへと旅立たせた。その後の大成功は説明するまでもない。

2人には約束があった。昨年7月の天皇杯3回戦、東京ダービーで再会した。J2を戦う緑の指揮官と青赤のレジェンド。延長戦を1-1で終え、PK戦も9-8という大接戦で東京が制した。サポーターの熱量に圧倒された。まさに夢の劇場。「あの空気感はあの場にいないと分からない」。試合後、城福監督は長友の肩を抱き、こう伝えた。

「現役を続けろよ。まだ東京ダービーという、やることがあるでしょ? だからJ1で待っててくれよ」

長友にとってはW杯に4回出場した直後の1年だった。「いろんなことをなしえた選手だったのでプレーヤーを続ける以外のことがあるのかなと…。僕の想像でした」。引退させてなるまいという思いから出た言葉。熱き師弟の心が交錯した。長友は今も活躍し、日本代表にも選出。「Jリーグの世界だけでなくスポーツを生業とする人たちにとっても目標であり続けている。自分も尊敬しているし、1年でも長くやってほしい」と師は願う。

2年後のW杯出場を掲げる長友に対し、城福監督もまた東京VがJ1で優勝することを目標とする。途方もない夢を追う男たちの魂が交差する東京ダービー。その姿は見る者の胸を熱くする。【佐藤隆志】

 

○…JFK(城福監督)の東京ダービー因縁

◆前回08年の対戦 東京監督として2試合とも後半追加タイムの得点で2-1の決着、1勝1敗の五分。

◆降格の遠因 東京監督時代の08年J1最終節で千葉に逆転負け。この結果で東京VのJ2降格が決定。

◆位置変更 プロ1年目の長友を指導。右サイドから左サイドに転向させ日本代表へと押し上げる。

◆元同僚の息子 東京MF高宇洋の父は元中国代表DF高昇さんで、城福監督が富士通のコーチ時代の選手。食事をしたり、自宅を訪問したこともある。