J2東京の主要株主で、大口スポンサーの東京電力が、スポンサーを撤退する方向で近日中にクラブ側と協議に入ることが25日までに分かった。東京電力は東日本大震災による福島第1原発事故により、周辺住民らへの損害賠償の支払いを抱え、極めて厳しい立場。広告活動を控えざるを得ない状況だ。東京のスポンサー料は推定2億円。東京は先月末からクラブハウスの看板を撤去。ユニホーム背部の「TEPCO」のロゴも、今月の練習試合からロゴが見えないようにし、前日24日の千葉との再開戦からロゴなしユニホームを着用していた。

 震災の影響がスポーツ界にも波及した。東京電力総務部吉村陽副長は「福島第1原発や電力需要の件で、大変な迷惑をおかけしている中、広告活動自体がおこがましい。株については継続して保有する方向ですが、近日中に自粛の方向でFC東京さんと協議に入る予定」と言い、今季のスポンサー撤退を示唆した。

 先月末から東京電力側の意向をくみ、広告物の掲示を自粛してきた東京の阿久根社長は「その件は協議中です」と言い、東京電力との間で話し合いに入ることを認めたが、それ以上のコメントは避けた。

 福島第1原発近くのJヴィレッジを本拠地としていたなでしこリーグの東京電力マリーゼは、事実上の休部となった。東京電力は現在も福島第1原発事故の収拾に追われ、損害賠償問題も急務と、極めて厳しい経営環境にある。

 このため、東京のクラブ創設時から大口スポンサーだったが、東京電力もクラブ支援を考え直さざるを得ない状況になっていた。原発事故の現状を考えれば、スポーツ界でのスポンサー活動の継続は、広く社会の理解を得ることはできない。シーズン途中でこうした異例の協議に入る背景には、今も進行中で収束の見通しが立たない原発事故が大きく影を落としている。

 東京にとっても、東京電力のスポンサー撤退となれば、クラブ運営上、大きな痛手になる。10年度までにあった累積赤字約4億円を半額の約2億円に減らし、1年でのJ1昇格を目標に掲げリーグ再開を迎えたばかり。DF長友のインテルミラノへの移籍金推定2億円が入り、累積赤字返済と並行して、長友の移籍金を原資にチーム補強に乗り出すか検討中だった。

 国難となった原発事故を目の当たりにし、東京も東京電力の置かれた状況を冷静に受け止めている。国民生活の平和が脅かされる現状では、プロスポーツの活動にもその余波が及ぶことは必至。リーグ再開試合で0-3と完敗し、MF米本の負傷、さらに大口スポンサーの撤退が現実味を帯びるなど、試練が幾重にもなって襲ってくる。J1復帰をサポーターに約束した東京にとって正念場だ。