<J2:磐田0-1札幌>◇第1節◇2日◇ヤマハ

 ベテランの技ありFKで、磐田討ち!

 J2札幌は、今季J2優勝の大本命、磐田とアウェーで対戦し、勝利した。前半16分、在籍12年目の最古参&最年長MF砂川誠(36)が直接FKを決めて先制。残り74分間、前田、松井ら強力な磐田攻撃陣を、21歳DF櫛引一紀、20歳DF小山内貴哉の若いセンターバックを中心に守り抜き、貴重な勝ち点3を獲得した。2年連続の開幕戦白星は、岡田監督が率いた01年以来13年ぶりとなった。

 計算し尽くした頭脳的な一撃で、昇格最有力候補の磐田をねじ伏せた。前半16分、ゴール前やや右からのFK。ボールをセットした砂川は、ピッチコンディションと磐田GK藤ケ谷の位置を見て、考えた。GKは中央寄り、壁は左寄り。右は空いていた。「(ゴール前の味方に合わせて)中に入れるか、シュートか。打っても悪くないかなと」。ピッチは雨でぬれていた。

 助走に入ると中央のFW石井謙伍(27)とMF内村圭宏(29)がゴール前に走り込む。中に蹴りこむと読んだ藤ケ谷は、逆をつかれた。「イメージ通り」。低い弾道のシュートは、壁の右側をまいて、水を含んだヤマハスタジアムの芝でワンバウンド。慌てて左に跳んだ相手守護神の手をはじき、ゴール右隅に吸い込まれていった。

 「狙うとは思わなかった。今年もまた大事な試合の大事な場面で決めてくれた。素晴らしいFKだった」と財前監督。昨年3月3日の千葉戦では、後半途中から出場し、ロスタイムに絶妙な右クロスから内村の決勝点をアシストした。今度は自ら決勝弾。指揮官をもあざむくクレバーなワンプレーで、昨年に続く開幕勝利の立役者となった。

 プロ19年目の大ベテラン。値千金の1発にも浮かれることはなかった。「FK以外何もやっていない。もっとミスを減らさないと。4バックとボランチが、体を張ってくれたおかげ。自分のゴールはおまけ」。本人の採点は厳しいが、苦しい場面でボールをキープするなど、劣勢の中、勝利への流れをつくったのも、また砂川だった。「砂さんの存在が大きかった。困ったときに預ければ、ゲームを落ち着かせてくれた」と内村。指揮官も「チャンスは、ほとんど砂川のところぐらいしかなかった」と振り返った。

 徹底した自己管理で沖縄、熊本の長期合宿を離脱なく乗り切った。グラウンドに向かうバスの出発時間より、40分前にトレーナールームに向かう。ストレッチを行い、マッサージを受け、体を入念にほぐしてから練習に臨んだ。オフは、多くの指導者に会い、教える立場のサッカー観を自らにフィードバック。札幌史上最多の出場387試合目。経験を積むほど謙虚に努力する姿勢が、勝負どころでの大仕事につながった。

 これで財前監督就任後、2年連続の開幕勝利。13年ぶり快挙も、勝負は始まったばかりだ。「うちは開幕ダッシュが苦手なんで。次、期待して見に来てくれるサポーターを裏切れないからね」。昨季は開幕勝利後、ホーム開幕戦から3連敗し、勢いを失った。大事な1勝を、意味あるものにする-。9日のホーム山形戦も、最年長36歳を中心に、貪欲(どんよく)に勝ちにいく。【永野高輔】