日本(FIFAランキング24位)が前回準優勝のクロアチア(同12位)にPK戦の末に敗れ、史上初の8強進出はならなかった。02年日韓大会(0-1トルコ)、10年南アフリカ大会(0-0=PK3-5パラグアイ)、18年ロシア大会(2-3ベルギー)と跳ね返されてきた16強の壁。4度目の今回もまた阻まれた。

日本は前半43分、FW前田大然(セルティック)のゴールで先制したが、後半11分にクロアチアに同点とされた。試合は両者譲らず今大会初の延長戦に突入。そこで決着がつかず、PK戦に突入。先蹴りの日本は1人目の南野拓実(モナコ)、2人目の三笘薫(ブライトン)が立て続けに失敗。3人目の浅野拓磨(シュツットガルト)が決めた。2人が成功したクロアチアは、3人目のリバヤが失敗。だが日本は4人目の吉田麻也(シャルケ)も失敗。クロアチア4人目のパシャリッチがゴールに成功し、1-3で敗れた。

    ◇    ◇

日本の先発は3-4-2-1。GK権田修一(清水エスパルス)、3バックは谷口彰悟(川崎フロンターレ)吉田、冨安健洋(アーセナル)。左ウイングバック(WB)に長友佑都(FC東京)、右WBに伊東純也(スタッド・ランス)を配置し、遠藤航(シュツットガルト)と守田英正(スポルティング)をボランチ。2列目左に堂安律(フライブルク)、右に鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)、1トップに前田。DF板倉滉(ボルシアMG)は出場停止、MF久保建英(レアル・ソシエダード)は体調不良でベンチから外れた。

対するクロアチアは4-3-3。GKリバコビッチ(ディナモ・ザグレブ)DFラインは左からユラノビッチ(セルティック)ロブレン(ゼニト)グバルディオル(ライプチヒ)バリシッチ(レンジャーズ)。ブロゾビッチ(インテル・ミラノ)をボランチに右にモドリッチ(レアル・マドリード)、左にコバチッチ(チェルシー)。3トップは左からペリシッチ(トットナム)ペトコビッチ(ディナモ・ザグレブ)クラマリッチ(ホッフェンハイム)という並び。

前半3分、右CK。ショートコーナーから谷口がヘディングシュートするも、惜しくもゴール左へ外れた。先発の平均身長は日本の179・3センチに対し、クロアチアは182・5センチ。体格差考慮し、1本でゴール前へ入れず、デザインされたセットプレーに日本は勝機を見いだしている。

逆に前半8分、縦パスの処理に入った冨安がペリシッチにボールを奪われ、フリーで打たれたが、GK権田がセーブ。「防衛大臣」と呼ばれる守護神が、序盤のピンチを救った。

前半28分にはクロアチアの波状攻撃に遭い、左右から次々とクロスボールを受けたが、守り切った。我慢の時間を乗り切った。すると30分すぎからは、日本が前からの連動した守備でボールを奪い、敵陣でボールを保持す時間帯が増えた。

前半41分には前田が前線で起点となり、遠藤のパスから鎌田が左サイドからゴールを狙ったが、シュートは枠を捕えられなかった。日本が攻勢をかけた。

そして前半43分、ついに日本が先制した。右CKからショートコーナーを使い、堂安が入れたボールがゴール前でこぼれ球となったところを、前田が左足で押し込んだ。日本が均衡を破った。前田は6月10日のガーナ戦(4-1)以来、国際Aマッチ2点目。今大会初めて日本が先制した。

両チームともメンバーを代えず後半戦へ。クロアチアは前回大会MVPのモドリッチを軸に、体格の優位性を生かし、クロスボールから活路を見いだした。後半11分、クロアチアに追いつかれた。クロスボールから33歳のベテランFWペリシッチに頭で合わせられ、同点ゴールを奪われた。1-1となった。

後半18分にはモドリッチの強烈なミドルシュートを浴びるが、ここは権田がファインセーブ。ゴールを許さなかった。ただ守勢に回る時間が増えた。19分、日本は長友に代えて三笘、前田に代えて浅野を投入した。過去3戦にならい2枚替えで勝負に出た。

後半30分には鎌田に代えて酒井宏樹(浦和レッズ)を右WBに入れ、馬力のあるクロアチアの前への推進力を消しにかかった。試合は一進一退の攻防が続く。

後半42分、疲れの見える堂安から南野に交代。森保ジャパンで最多の17得点、南野の勝負強さに懸けた。試合は両チームの意地と意地がぶつかり合う形で譲らず、延長戦に突入した。

前後半計30分に及ぶ延長戦。クロアチアは延長前半9分、疲れが見える37歳モドリッチとコバチッチの中盤の軸2枚を下げた。フレッシュな選手を入れて勝負をかけてきた。日本は押し込まれる展開が続くが、しっかりとブロックを敷き、シュートをブロックしていく。その一方で、相手を引き込みながらカウンターから浅野を走らせる。延長前半15分、三笘が中央付近からドリブルで約40メートル運びシュート。強烈な一撃はGKリバコビッチのセーブに阻まれた。「戦術三笘」が持ち味を発揮した。

延長後半開始から守田に代えて田中碧(デュッセルドルフ)を投入。クロアチアは変わらずクロスボールから勝ち越し点を狙う。対する日本は全員で守り、クロスボールを跳ね返し、そこからのカウンターに徹した。

辛抱の時間が続いたが、日本は耐えた。試合終了のホイッスル。勝負の行方はPK戦に委ねられたが、日本は南野、三笘が失敗し、3人目の浅野こそ成功させたが、続く吉田もゴールできず。逆にクロアチアは3人が決め、4人で勝負は決着した。

前回大会でベルギーに土壇場で逆転負けを喫した「ロストフの悲劇」から4年。目標とする8強へドイツ、スペインを破り突き進んだ森保ジャパンだったが、あと一歩のところで「新しい景色」を見ることはできなかった。

▼記録メモ 日本-クロアチア戦はW杯史上31度目のPK戦。日本はGKリバコビッチに南野、三笘、吉田の3人のキックが防がれた。1度のPK戦でGKに3本止められたのは、06年大会準々決勝のイングランド(ポルトガル戦、GKリカルド)、18年大会決勝トーナメント1回戦のデンマーク(クロアチア戦、GKスバシッチ)に次いで3チーム目。