メッシはチームのために、チームはメッシのために-。36年ぶり3度目の優勝を果たしたアルゼンチンは、まさに「メッシのためのチーム」。パスを集め、守備では全力疾走で穴を埋める。それにメッシはゴールという結果で応えてきた。今大会最年少の44歳で偉業を成し遂げたリオネル・スカロニ監督も、エースの言葉を胸に臨んでいた。

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試合終了から3時間がたっても、もちろん興奮は冷めない。アルゼンチンの選手たちは、歓喜の歌を大合唱しながら取材エリアにやってきた。「アレ、カンピオーン! アレ、カンピオン!」。王者となった喜びを爆発させ、歌って踊って騒ぎまくった。ボトルからシャンパンを振りまきながら、行進していく姿はまるでパレードのよう。その先頭には、優勝トロフィーを大切に抱えるメッシがいた。

「世界最高の選手がいることが僕たちのアドバンテージ」。仲間たちは口をそろえて言い続けた。ボールを奪いチャンスとみれば、すかさずメッシにパスを出す。ボールを奪われピンチになれば、メッシの分まで走って戻り穴を埋める。その味方の献身をゴールにつなげるメッシ。強固な信頼関係があるから、陽気な南米のチームは強かった。

試合後に行われた会見の中でスカロニ監督は、メッシとのあるエピソードを明かした。昨年11月、ブラジルに0-0と引き分けで、W杯出場権を獲得した直後だった。「私は不安を感じていた」。当時チームは最終予選無敗の強さを誇っていたが、このままうまくいくのか、指揮官の心の中に迷いがあった。メッシが所属するパリ・サンジェルマンに戻る直前、2人だけで話をした。「私たちは続けられる。きっとうまくいく」。エースの短くも力強い言葉が、スカロニ監督の背中を押した。

残してきた数々の功績だけではなく、人柄や存在感に人々はついて行く。昨季限りで現役を引退した盟友のアグエロはチームに同行し、挑戦を続けるメッシを裏方としてサポートした。2人の夢をかなえると、現役時代と同じ「19」のユニホームを着たアグエロは、「10」を背負う友を誇らしげに肩車した。

メッシに先制のPKをもたらし、前半36分に自ら追加点を決めたFWディマリアは、ゴールの直後に早くも涙を流した。ともに戦い続けた日々がよみがえってきたのだろうか。1人1人がメッシを思い、ともに戦った、唯一無二のW杯だった。【磯綾乃】

○…大会最年少44歳でW杯を制したアルゼンチンのスカロニ監督は試合後、観客席から息子を呼び寄せ、ベンチで抱き合った。親子ともども、その目には涙が浮かんでいた。優勝インタビューでも、珍しく子連れのままで対応。「お父さんは世界チャンピオンになったんだよ。分かっているよね」と語りかける場面もあった。家族に優勝を捧げると話し「両親はどんな時もあきらめるな、前を向いて進み続けろと教えてくれた」と、劇的な結末にもつながった親の教えに感謝していた。

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