新型コロナウイルス感染拡大によりスペインリーグが無期限延期となる中、財政面に大ダメージを受ける各クラブは、この非常事態を乗り切るために選手の給与削減など、さまざまな対応を見せている。
中でも注目を浴びたのは、年間予算10億ユーロ(約1200億円)超えで世界トップのバルセロナ。トップチームの給与総額は4億2700万ユーロ(約512億4000万円)、メッシの年俸は手取り5000万ユーロ(約60億円)となっている。
バルセロナの総収入に対する人件費総額の割合は68%。これは、健全経営のために超えてはならないとECA(欧州クラブ協会)が示す70%に非常に近い数字である。
新型コロナウイルスの影響による収入減少で、予定していた年間予算を達成できる可能性が低くなったバルセロナは、人件費を支払うことが困難となり、選手たちとの話し合いが必要となった。最終的に非常事態宣言下に限り、選手の給与については70%カットで合意に達している。
合意条件について、非常事態宣言が30日続いた場合は給与総額の5・75%に当たる1400万ユーロ(約16億8000万円)、60日の場合は11・5%に当たる2800万ユーロ(約33億6000万円)がカットされることになる。
バルセロナはさらに、高額な人件費を少しでも削減するため、クラブ職員に対しては国の法律で定められているERTE(一時雇用調整)を申請している。ERTEとは今回のように不可抗力の事態により経営が困難になった企業が、国から一時的な雇用契約の停止および労働日削減を認められる制度。その間、クラブ職員には失業手当として、過去180日間の給与平均の70%が支払われる。
そして失業手当の不足分を、選手の削減した給料とクラブでカバーする予定である。すなわち、バルセロナは国の力を借りつつ、クラブ職員に対して給与全額の支払いを保証する形をとったことになる。
アトレチコ・マドリード、セビリア、エスパニョール、アラベスの4クラブもバルセロナと同じ措置を選択した。一方で、レアル・マドリードを含む他の15クラブはERTEを申請していない。
Rマドリードは、シーズンが再開した場合は年俸10%カット、シーズンがこのまま再開されずに終了した場合は20%カットで選手たちと合意に達した。ERTEを申請せず、クラブと選手で職員の全給料をカバーする予定である。
RマドリードがERTEを申請しない要因として、収入に対する人件費総額の割合が52%とバルセロナと比べて低いこと、そして過去10年間で3億2400万ユーロ(約388億8000万円)の純利益を積み上げていることが挙げられる。
また、トップチームの給与総額は2億8300万ユーロ(約339億6000万円)、チームトップの年俸はセルヒオ・ラモスとベイルの手取り1450万ユーロ(約17億4000万円)と、バルセロナと比べ給与面のコストを抑えていることもERTEを選択しない要因のひとつとなっている。
バルセロナとRマドリードの選手の給与削減率を比較すると、バルセロナが70%カットのため、Rマドリードよりも大きく見える。しかし実際にはバルセロナが“非常事態宣言下のみ”であるのに対し、Rマドリードは“年俸”からの削減であるため、リーグ戦がこのまま再開されずに終了した場合、11・5%カットのバルセロナを、20%カットのRマドリードが上回る。
ベティス、レバンテ、オサスナ、ビリャレアル、バリャドリード、セルタの6クラブがRマドリードと同じ措置を選択している。
ベティスはリーグ戦が再開されない場合15%、リーグ戦再開も無観客開催の場合5%、通常通り再開される場合2%年俸がカットされる。レバンテはそれぞれ20%、3%、1%カットとなる。一方、オサスナとビリャレアルはシーズンが再開されない場合は年俸20%カット、バリャドリードは年俸17%カット、セルタは削減率を公表していない。
久保建英所属のマジョルカ、バレンシア、ビルバオ、グラナダ、レガネスの5クラブは現在、給与削減を交渉中。この中でマジョルカはリーグ戦が再開された場合、給与削減なしの予定である。乾貴士のエイバル、ヘタフェ、レアル・ソシエダードの3クラブは給与削減を実施しない。
2部のクラブに目を向けると、香川真司所属のサラゴサは給与削減とERTEを実施、岡崎慎司のウエスカは給与削減を行い、ERTEを申請しない。柴崎岳のデポルティボはどちらも行わない予定である。
非常事態宣言下、スペインリーグの各クラブは選手と協力してさまざまな対策を講じ、この未曽有の事態を乗り越えるべく闘っている。そんな中でのクラブや選手個人による寄付や物資支援は、サッカーファンのみならず、さまざまな人々を救済するための大きな力、そして大きな光となっている。
いまだリーグ戦再開のめどは立っていないが、各クラブが財政面で早く正常な姿を取り戻し、再び素晴らしいサッカーを見せてくれることを切に願っている。【高橋智行】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)


