[ 2014年2月19日9時11分

 紙面から ]全品10%引きセールを実施した矢内菓子舗のV字フランス(左)とV字あんぱん

 人口約3500人のジャンプの町が、歓喜に沸いた。ソチ五輪ジャンプ男子団体で銅メダルを獲得した葛西紀明(41=土屋ホーム)と伊東大貴(28=雪印メグミルク)の故郷、北海道・下川町では18日、町民が「おめでとうセール」を行うなど、祝福ムード一色に包まれた。「ジャンプのまち下川」として、町一丸となって選手育成などに力を入れており、町民みんなが喜びを分かち合った。

 氷点下7度と冷え込んでも、下川町民には1年で最も熱い1日になった。団体銅メンバー4人のうち、葛西と伊東が同町出身。深夜のパブリックビューイングでは約200人が万歳三唱で喜び、夜が明けると、商店街のあちこちで「おめでとうセール」が始まった。

 スーパーの「寿フードセンター」ではセールのほかに、急きょ「V字弁当」を販売。5色の総菜でかたどった「V字」を白飯に乗せ、おかずに鶏肉やエビフライ、トンカツを添えた。夏野俊一代表(72)は、「鳥のようにフライして勝つことができたから」。用意した50個は午後には完売した。「矢内菓子舗」では、パン全品10%の大サービス。五輪に合わせて作ったパン「V字フランス」は焼き上がるとすぐに売りきれた。喫茶店「アポロ」では、ナポリタンを葛西の年齢に合わせて、410円(通常680円)で提供した。

 町にはジャンプ台が大小4つある。77年に結成された下川ジャンプ少年団は葛西、岡部孝信(43=雪印メグミルク)ら多くのトップジャンパーを送り出した。OBで、今大会女子ノーマルヒル7位の伊藤有希(19=土屋ホーム)の父克彦さん(47)が94年から町職員として招かれ、コーチを務める。町内唯一の高校、下川商入学者への助成制度も用意され、寄宿舎をジャンプ台そばにつくるなど、育成や強化に手厚い。

 町民にとって、ジャンプは身近な存在だ。安斎保町長は「ソチでは3人の選手が活躍してくれた。今までの関係者の努力があったから。今回の結果だけを見れば『ジャンプのまち下川』と言っていいのでは。今後もジャンプで町をアピールしていきたい」と誇らしげだった。【保坂果那】

 ◆下川(しもかわ)町

 北海道北部を流れる天塩川支流、名寄川の上流部にある。町の面積は644・2平方キロメートルで、9割が森林。以前は鉱業がさかんだったが、現在は衰退。カナダ・ケノーラと友好都市関係。人口3533人(2月1日現在)。安斎保町長。