「日本の絆」で頂点をつかんだ。高橋侑子(27=富士通)が1時間59分29秒で金メダルを獲得。佐藤優香(26=トーシンパートナーズ、NTT東日本、NTT西日本、チームケンズ)は最後のランで途中棄権となった。

日の丸の旗を持った高橋が、笑顔でフィニッシュテープを持ち上げた。スイム1・5キロ、バイク40キロ、ラン10キロの過酷なレースを終えても、高橋の表情には余裕があった。「スイムとバイクで後ろに差をつけるのが理想の展開でした。その展開にできました。(後続と差がついた)この展開は予想していなかったけれど、とにかく集中しました」。スイムをトップで終えると、バイクを経て、常時2~3分の差をつけて「心配要素」というランに突入。最後まで1人旅となり、2位の中国選手に1分47秒の差をつけて逃げ切った。

個人種目だが、日本チームとして頂点を狙った。アジアの中で高橋、佐藤の力は抜けており、2人はマークされる存在だった。事前のミーティングでも、2人そろってスイムから抜け出すことを想定。だが、スイムは高橋が1人抜け出す形となり、佐藤は他国の選手と集団でバイクに乗った。

他国の選手は実力のある佐藤の様子をうかがうため飛び出すことはしなかった模様で、高橋のリードは確固たるものになった。自身は脱水症状となり、ランの約7キロ地点でリタイア。日本トライアスロン連合オリンピック対策チームの中山俊行リーダーは「日本チームとして金メダルを取るのが最優先となっていた。高橋選手だけじゃなく、佐藤選手も出遅れてしまいましたが、仕事を果たしてくれて(高橋が)優勝できた」とねぎらった。

処置を終えた佐藤は元気な姿を見せ「大丈夫です」と体調面について言及。「スイムで高橋選手と上がって、バイクで2人で差をつけるつもりだったんですが、イメージから外れてしまった。スイムの2周目から暑いと感じて、バイクも私自身で集団から抜け出すほどペースを上げることができなくなっていた」。その結果、「高橋選手が余裕を持って逃げられるような役割に徹しようと思いました」と振り返る。

アジアの中で日本は優位な立場だが、20年東京五輪に向けてはさらなるレベルアップが求められる。中山リーダーは「普段のトライアスロンのアジア選手権はトライアスロンの中の大会。でも、アジア大会では日本という国のプレッシャーを背負う。そのメンタルの面をクリアしてくれたと思います」。金メダルを手にした高橋は「ランでの走力。そこを少しずつ詰めていきたい」と成長を誓った。