全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は16年1月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。東日本予選を制したホンダは、前回4区の区間記録(1時間2分47秒)を樹立した設楽悠太(24)を軸に初の頂点を狙う。

 ニューイヤー駅伝に向けて、設楽が強い決意を口にした。「目標は1時間1分台です」。自身の区間記録を大きく上回るタイムを目標に掲げたのだ。「その記録で走れば、(他チームにリードされていても)1分差くらいまでは逆転できる。自分がトップに立てば、チームも優勝できると思います」と優勝への青写真を描いた。

 東洋大2年の時から3年連続で箱根駅伝の区間賞を獲得したが、2学年上の柏原竜二(現富士通・26)や、双子の兄・啓太(24=コニカミノルタ)が同じチームにいたため、エース区間の2区や5区を任されることはなかった。入社1年目の最長区間(22・0キロ)出場は設楽から大沢陽祐監督に直訴したが「自分が実業団駅伝のエース区間を走って良いのか?」という戸惑いもある中での申し出だった。しかし走り出してみればそんな不安は無用だった。今井正人(31=トヨタ自動車九州)村沢明伸(24=日清食品グループ)窪田忍(24=トヨタ自動車)そして兄の啓太といった並みいる強豪選手たちを抑えて区間賞獲得とともに区間新記録まで樹立して見せた。

 それを自信とした設楽は苦手意識のあったトラックでも力を発揮する。6月の日本選手権1万メートルでは2位に入賞して北京世界陸上切符も手にした。

 駅伝シーズンに入ったが設楽と大沢監督は「何区を走るのか」という会話をまったくしていない。言葉は交わさなくとも大沢監督は設楽にエース区間の4区を任せるつもりだからだ。大沢監督は「1時間1分台はすごい数字です」と、設楽の力を持ってしても実現が簡単ではないと考えている。しかしその一方で「1年前と比べて実際にタイムが上がっている練習もあるし、同じ練習をしても余裕度が大きくなっている」と成長を認める。

 チームとしての問題は3区終了時点でのトップとのタイム差だ。ホンダはこれまでのニューイヤー駅伝では後半区間ではライバルチームと遜色ない走りをしてきたが、1区や3区で後れをとることが多かった。前回大会では3区終了時にトップの日清食品から1分55秒の差をつけられての10番目での通過。そこから追い上げて4位に食い込んだが、やはり前半の出遅れが痛かった。

 前半の3区までのを誰が走るのかがホンダの課題といえる。候補選手は多い。東日本予選で6区の区間賞を獲得した主将の馬場圭太(29)、前回5区区間5位の服部翔大(24)、東日本予選1区区間4位の新庄翔太(23)、東洋大時代に箱根駅伝で2度の区間賞獲得の田口雅也(23)らだ。そのなかから調子の良い選手が前半区間に起用される予定だ。世界陸上2大会連続代表の藤原正和(34)や、2時間9分台の記録を持つ佐野広明(27)らマラソンランナーも5~7区の向かい風となる区間で大きな戦力となる。

 ホンダの最高順位は94年大会の2位で、今大会の5強(ホンダ、日清食品グループ、コニカミノルタ、トヨタ自動車、旭化成)の中では唯一、優勝したことがないチームだ。その分、優勝に対する思いは強い。ベテラン選手はもちろん、新人選手たちも「今季は優勝を目指してきたので、そのために…」と異口同音に話す。ホンダの今季のスローガンは「いざ、頂点へ!」。チーム史上最高の戦力は整った。元日にスローガンを現実に変える。