10種目で今季世界最高記録が誕生する盛況だった。

 なかでも女子3000メートル障害はセルフィン・チェプソル(18=ケニア)が8分58秒78の世界歴代2位、U20世界最高記録と最もレベルが高かった。男子3段跳びのクリスチャン・テイラー(26=米国)の18メートル11も、世界記録に18センチと迫る好記録だった。

 テイラーの190センチの長身が大きく弾んだのは5回目の試技。本人も手応え十分だったようで、砂場の正面に設置されたテレビカメラに向かって吠えるようにガッツポーズをした。18メートル11は自己記録(世界歴代2位の18メートル21)には届かなかったものの、セカンド記録の世界最高だった。

 テイラーは好記録の理由として「オレも年齢は上がってきているけど、毎年、少しずつ賢くなっている。3段跳びに学ぶことができていると思う」と、技術面の進歩を挙げた。

 3段跳びの世界記録(18メートル29)はこの種目のレジェンド、ジョナサン・エドワーズ(英国)が1995年の世界陸上でマークした。だが、18メートルを超えた試合はエドワーズが3大会だったのに対し、テイラーはユージーン大会が4回目でレジェンドを上回った。世界記録更新を予感させるパフォーマンスだった。

 女子3000メートル障害のチェプソルは昨年のU20世界陸上優勝者。ケニア期待の若手ではあったが、今大会で世界記録保持者&リオ五輪金メダリストのルス・ジェベト(20=バーレーン)や、リオ五輪4位のベアトリス・チェプコエチ(25=ケニア)に勝つことまでは予想できなかった。

 「難しい挑戦でしたがベストを尽くしました。もちろんハッピーです」と、初々しいコメントを残している。

 女子200メートルのトーリ・ボウィー(26=米国)も21秒77の今季世界最高だった。リオ五輪金メダルのエレイン・トンプソン(24=ジャマイカ)と、銀メダルのダフネ・シュキッパーズ(24=オランダ)の対決と見られていたが、見事に下馬評を覆した。前半で大きなリードを奪い、2位になったリオ五輪400メートル金メダリストのショーン・ミラー(23=バハマ)の追い上げを余裕でかわした。

 ボウィーは「フィジカル面もメンタル面も良い状態で臨むことができましたし、プレッシャーも感じませんでした。自分のプラン通りにレースができたんです」と、会心のレースを振り返った。

 トンプソンも後半で追い上げたが3位。スタートで失敗して大きく出遅れたことが敗因だった。

 ◆今季の男子3段跳び

 2017年世界リストではユージーン大会のテイラーが1位で、2位は17メートル40のアンディ・ディアス(21=キューバ)とウィル・クレイ(25=米国)の2人。リスト1・2位の記録差ではテイラーの独走状態のように見えるが、フロリダ大でテイラーの後輩にあたるクレイは、ユージーン大会で追い風2・4メートルの参考記録ながら18メートル05を跳んでいる(追い風2・0メートルまでが公認記録)。

 ダイヤモンドリーグ・ドーハ大会(5月5日)では、テイラーが17メートル25で優勝したが、2位のオマー・クラドック(26=米国)とは17センチで、そこまで大きな差はつかなかった。

 テイラーに世界記録更新を期待できるが、“1強時代”とは言い切れない。