決勝のレースは、2位に入った6レーン坂井に、皆がやられた部分がある。多田(修平)に引けをとらないぐらい、すごいダッシュだった。一気に飛び出した。両サイドにいた5レーンサニブラウン、7レーン小池は、ちょっとリズムが狂っていた。スプリンターは、心に動揺がなくても、前に出られると、体が反応してしまうもの。坂井が見せた抜群のスタートが、周囲に何かしらの影響を与えたことは間違いないだろう。

サニブラウンは、勝つ、という感じのゴールラインの駆け抜けだった。1番を確保する走りだった。予選から10秒11、準決勝は10秒04と、各ラウンドをしっかりと走っていた。世界大会では予選10秒2台では敗退する。サニブラウンは、少し力を入れれば、世界大会でも、それぞれのラウンドをクリアする走りを見せていた。すごく価値がある勝ち上がりだった。

やはり体調が戻ってくると、いい走りができる。タイミングがあった時は、ワールドクラスの走りになる。世界選手権まであと1カ月あるので、小さなミスをなくして、成長していければ、しっかりと上のステージまでいけるだろう。

小池は、坂井のダッシュがあったが、しっかりと後半に立て直してきた。200メートルが楽しみといえる。

坂井はこれまでダッシュが得意だったが、けがに泣かされてきた。あのダッシュ力で10秒10。自信をつければ、参加標準記録10秒05にも届いてくる選手になるだろう。多田が17年のセイコー・ゴールデングランプリで、ガトリン(米国)を驚かせたような衝撃が、周りの選手にはあったのではないだろうか。(男子100メートル元日本記録保持者)