【ブダペスト(ハンガリー)=藤塚大輔】日本記録保持者の泉谷駿介(23=住友電工)が男子ハードル界に新たな歴史を刻んだ。同種目で五輪を含めた世界大会では日本人で初めて決勝に進み、13秒19(無風)で5位入賞した。

なぜ身長175センチの泉谷が男子110メートル障害で日本人初の決勝に進出できたのか?

来夏のパリ五輪でメダルを獲得するためには、何が必要となるのか?

2つの観点から説明する。

(1)なぜ泉谷が決勝へ進めたのか? その理由は身体能力の高さにある。高校時代に八種競技を専門としていたため、競技スキルが優れている。走り幅跳びでは今年の日本選手権3位相当の8メートル00、100メートルでは10秒37の自己ベストを保持。踏み切る力やスプリント力が融合し、ハードルに生きている。山崎一彦コーチもハードル間の刻みを「世界一のインターバル」と太鼓判を押す。

(2)パリ五輪でさらに上位を目指すには何が必要なのか? その鍵を握るのが、海外のハードル器具への対応力だ。日本ではしなりのある材質が使われているが、海外の試合で使われることが多いモンド社のハードル素材は木製で硬い。準決勝で敗退した高山峻野は「ぶつけたら足にひっついてくるので、なかなか抜き足が抜けてこない」と証言する。決勝では上位勢がほとんどハードルに足を引っかけない中、泉谷は4台を倒した。今季は13秒0台を3度マークしていたが、今大会3レースでの最高タイムは準決勝の13秒16だった。

その課題に対応するためには、海外レースを重ねることが不可欠となる。6月から世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグへ出場し始めた泉谷は、さらに経験を積み、感覚を養う必要がある。【藤塚大輔】