陸上女子800メートルの新潟県記録保持者で、研修医との二刀流アスリート、広田有紀(28=新潟アルビレックスRC)が北陸実業団陸上選手権(6、7日、新潟市陸上競技場)で約1年ぶりにレースに復帰する。

左足のケガに悩まされ続けてきたが、ここに来てコンディションが上向きに。新潟開催の日本選手権(6月27~30日、デンカS)に照準を合わせてシーズンに入る。

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「走ることに意味がある」。北陸実業団での広田のテーマは明確だ。大会出場は3位だった昨年5月3日の静岡国際以来。その後に左足の疲労骨折で離脱した。年が明け、2月に奄美大島での実業団合宿に参加するなど回復傾向にある。見据えているのは、22年以来の出場で地元開催の日本選手権。「そのためにここで刺激しておく」と今大会でスイッチを入れる。

昨年から新潟大医歯学総合病院に研修医として勤務。練習は夜勤明け、または夜勤前など2時間ほど。それでも「心は元気」と笑う。職場の同僚や患者が「試合、見に行くよ」と声をかけてくれる。多くの人の応援が素直にうれしい。

20年3月に秋田大医学部を卒業後、研修医にならず、新潟RCで陸上に専念した。21年の日本選手権では自己ベストで県記録の2分4秒18で2位に。ただ、「アーチが高くケガをしやすい」(広田)足の裏には負担がかかった。1人でメニューを作り、追い込む毎日。思うように走れないもどかしさが募った。

今、練習量は減ったが、人との関わりが増えた。自分を追い詰め過ぎることはなくなった。求めるのは成績よりもどこまで自分を出せるか。「仕事も練習も頑張って、日本選手権ではやり切るという感覚を味わいたい」。そこにたどり着くためのシーズンが始まる。【斎藤慎一郎】

◆広田有紀(ひろた・ゆうき)1995年(平7)5月20日生まれ、新潟市出身。新潟高では女子800メートルで2年時に国体、3年で全国高校総体優勝。秋田大医学部に進み、16、18年日本選手権4位、19年のインカレ2位。21年日本選手権2位で、県記録で自己ベストの2分4秒18をマーク。20年から新潟アルビレックスRCに所属。165センチ、50キロ。血液型O。