サッカー日本代表が敵地で強敵オーストラリアを終始圧倒して、7大会連続W杯出場を決めた。立役者は後半39分から出場して2得点のMF三笘薫(サンジロワーズ)。守備網を蹴破るような切れ味鋭いドリブルは一級品だった。彼がピッチで放った強い光が、11月に開幕するW杯カタール大会の希望の光に、私には見えた。

24歳の三笘は昨夏4位と健闘した東京五輪世代。この世代の成長は、チーム力をもう1段上に押し上げる起爆剤になる。戦力の向上とともに、ポジション争いが激化し、常連組にとって新たな発奮材料になるからだ。35歳のDF長友も試合後の会見で「若手の吸収力はすごい。より一層努力しないとW杯にはたどり着けないと危機感を抱いた」と語っていた。

成熟した組織に若い力がうまく融合すると、時に劇的な変化が起きる。00年シドニー五輪で1次リーグ突破の原動力になったFW柳沢、MF稲本、DF宮本らがA代表に昇格すると、低迷していたトルシエジャパンの快進撃が始まった。同年のアジア杯を制すと、01年コンフェデ杯で準優勝。そして、02年W杯日韓大会で1次リーグを突破した。

10年W杯南アフリカ大会もDF長友、MF本田、FW岡崎ら08年北京五輪世代が、決勝トーナメント進出の推進力になった。起用する選手は、その時々の戦力や、監督の戦術などの事情もあり、世代で選ばれるわけではない。ただ、どんなに優れた組織でも、新陳代謝がなければ成長や勢いは鈍化する。ようは経験に若い力をいかにうまくマッチさせるか。それは社会もスポーツも同じだ。

森保ジャパンは1勝2敗と低迷したW杯アジア最終予選第3戦まで、東京五輪世代の先発はDF冨安だけだったが、昨年10月の第4戦オーストラリア戦で先発した同世代のMF田中が、自らゴールを決めるなど勝利に貢献して、チームは息を吹き返した。今回の三笘も含めて、同世代の成長が、チームに勢いをつけていたように思える。

DF吉田やMF遠藤ら、歴戦のレギュラー陣のレベルは高く、選手層も厚い。下克上は簡単ではないが、W杯開幕まで、まだ8カ月ある。吉田は「本大会で出場する選手はがらっと変わると思う」と会見でコメントした。本当のサバイバルレースはこれから始まる。伸び盛りの五輪世代がどこまで伸びしろを広げることができるか。それが森保ジャパンの進化に直結する。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「スポーツ百景」)

【W杯】ウルグアイ4大会連続 オランダ2大会ぶり 日本7大会連続/出場国一覧

オーストラリア戦から一夜明け、帰国した三笘(右)。手前は林、左は上田(2022年3月25日撮影)
オーストラリア戦から一夜明け、帰国した三笘(右)。手前は林、左は上田(2022年3月25日撮影)