今回はスポーツと食にまつわる私自身の体験と、「食=心身の健康」についてお話ししたいと思う。

ランナー時代は体重コントロールのため、炭水化物はほぼ取らず、低脂質・高タンパクのものを選んでいた。朝練は16~20キロほど走るのだが、走る前には食べ物は口にしない。朝食は和食、ご飯は3口ほど。昼食は、タンパク質中心で炭水化物はなし。午後練習も16~20キロ走り、夕飯は魚やささみ、豆腐中心、炭水化物なしの生活をしていた。

時には、昼食も抜いて体重を調整。ポイント練習の時のみ、サプリメントで不足分を補っていた。

そのころ、自分にとっての食事は「身体を作るため」ではなく、「体重をコントロールするため」のものだった。体脂肪は6~8%、貧血にこそならなかったが、月経は止まり、気付けばあちこちを故障していた。

正直、これはオススメ出来ない。

今となっては、この経験が糧となり、「自分の心身の健康」を考えるようになった。


バランスの取れた食事が健康につながる(トライアスロン選手時代の一例)
バランスの取れた食事が健康につながる(トライアスロン選手時代の一例)

トライアスロンをはじめてからは、「身体を作るための食事」を意識するようになった。

陸上よりトレーニング時間も長く、1日3種目のボリュームのあるトレーニングの日は、1日中動きっぱなしだ。「体重が増えるから…」というより、いつからか「体重が減らないように…」と食事を取るようになっていた。

引退して早1年が経つが、その間気付いた事がある。それは、人は何かに意識を向けるほど、そのものに対する欲求が高まるという事だ。

陸上時代「体重」というものに意識を向けすぎていたせいで、食に対する欲求が異常だった。「食べてはいけない」と思えば思うほど、食に対する欲求が増すのだ。

トライアスロン時代は、逆に食べなければならなかったので、食に対する欲求はほぼなかった。

今は…というと、また「食に対する欲求」が高まりはじめている(笑)。

この事を踏まえて、身体を作る食事は、心身の健康におけるバロメーターであると考えている。

では、どうしたら心身の健康を保てるのか…というところだが、心身の健康を保っているお二方を例にあげたいと思う。


トライアスロン元日本代表の田山寛豪さん
トライアスロン元日本代表の田山寛豪さん

私がトライアスロン時代お世話になっていた田山寛豪さんは、朝にしっかりとした朝食は取らず、コーヒーのみでトレーニングを行う。正午以降にしっかりとご飯を食べ、20時以降は何も食べず、翌日の正午まで過ごす…というサークルでご自身の健康を管理している。

朝食を抜くことにに対してはさまざまな意見があると思うが、メリットとしては、内臓疲労の軽減だ。内臓疲労に陥ると口から摂取した食べ物の消化吸収機能が低下し、疲労感を覚えるようになる。

私自身もアスリート時代、トレーニング休暇日は意識的に内臓を休めるために半日断食などをしていた。内臓疲労は肉体疲労と同様、パフォーマンスに直接影響するからだ。

成長期の子供などはこの方法は無理があるかもしれないが、持久系アスリートや趣味で運動をしている方、一般の方には良い方法かもしれない。


80代でアイアンマンレースに出場している稲田弘さん(左)と筆者
80代でアイアンマンレースに出場している稲田弘さん(左)と筆者

もうひと方、いまだにトライアスロンのアイアンマンレースに挑戦している今月89歳を迎える稲田弘さんだ。

稲田さんの健康法は、毎日同じものを同じ時間帯に食べるというものだ。このルーティンがあるからこそ、健康を保ちながら病気もなく過ごしているという。特に夕食には、野菜、煮干し、玄米を食べていると聞き、まさしく『食は人を良くする』そのものだと感じた。

稲田さんはエスカレーターは使わず、常に階段を使う。電車も座らないという。日常生活の中で、少しでも健康でいるためにと考えているそうだ。

2人とも自分流の健康法があり、セルフコントロールをしている。

コロナ禍になり、健康増進がうたわれる昨今。

運動をし、自分の身体を作る食にもこだわりを持ち、そして何より、楽しくおいしく食べて心身の健康増進につとめていこうと思う。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)