東京オリンピックの暗い話題がニュースをにぎわせているが、スポーツそのものがマイナスのイメージで見られていないだろうか、と心配になってくる。スポーツは社会を良い方向に向かわせてくれるものだと、私は信じている。


東京パラリンピックの銀メダリスト宇田秀生選手(右)も積極的に国際交流
東京パラリンピックの銀メダリスト宇田秀生選手(右)も積極的に国際交流

この夏、スポーツと政治について考える機会があった。7月2日、日本スポーツ法学会主催の2022年度夏期合同研究会に参加した。テーマは「スポーツ法と国際政治との関係性~現在地と未来への展望を考える~」だった。

私はパネリストとしてアスリートの立場から参加し、意見交換した。正直、国際政治の歴史的背景を深く理解しているわけでもなく、スポーツにまつわる法的なことも自分が関わる部分しか理解が及ばない。私はアスリートとして、シンプルに国際交流を通して感じたこと、考えてきたことを話した。

結果的に、参加して良かったと思った。歴史的背景、オリンピック憲章、現在問題とされている事柄についての研究報告があり、弁護士、スポーツ法の専門家のみなさんの意見を聞くことができた。

元プレーヤーとしては、みなさんがあんなにもプレーヤーのことを考え、研究し、より良いスポーツ界にしようと動いていることに感激した。先生方からは「アスリートの率直な素直が気持ちが聞けて、ますます良い方向に改善していかなければならないと感じました」との感想もいただいた。

立場は違うが、「スポーツを愛する」「スポーツは価値のあるもの」という共通の気持ちがあることがとてもうれしく、心強く感じた。


宇田選手(左から3人目)と外国人選手たち
宇田選手(左から3人目)と外国人選手たち

スポーツと政治の関わりというと難しく聞こえるが、ここでは「スポーツは人にどんな影響をもたらすのか」「オリンピアン、アスリートは、社会にどのような影響を与えていけるのか」をシンプルに考えていきたいと思う。

大前提としてスポーツ(運動)は人を健康にする、という効果がある。

それに加え、3つのキーワードを元にスポーツのメリットについて考えた。


国際交流の様子。東京オリンピック代表の岸本選手(左)と韓国選手
国際交流の様子。東京オリンピック代表の岸本選手(左)と韓国選手

1つ目は、国際友好・親善への貢献だ。

最近最も強く感じるのは、スポーツは平和でなければ出来ない。平和というのは、戦争のみならず、病気、天災、環境問題などが関わってくると思う。

戦争や感染症などは1人の力ではどうすることも出来ない。

しかし、スポーツを通して出会った仲間、そして仲間の国の事を想い、行動し、想い続ける事が平和への一歩になるのではないかと思う。

現に、コロナ禍で東京オリンピック・パラリンピックが延期となり、他のスポーツイベントもことごとく延期・中止となった。その際に、私の元には海外の友達からメッセージが届いた。「日本がとても心配だ。だけど、私たちは乗り越えられる。共にがんばろう」という内容だった。とても心が温かくなり、トライアスロンを通してこのような経験ができたことに感謝だ。


地域振興として、筆者の地元・銚子市にてイベントを開催。県外からご参加のみなさん
地域振興として、筆者の地元・銚子市にてイベントを開催。県外からご参加のみなさん

2つ目は、青少年の育成だ。

私は幼少期からスポーツを通して夢を持ち、その夢の実現に向けた行動をしてきた。

振り返ると、幼い頃から自分の目標を自分で立て、そこに責任も持ち行動することはとても大切な事だと思う。さらには、友人やコーチ、先生、親に対する感謝の気持ち、思いやりの気持ちもスポーツを通して培われた。

人、モノ、自分を大切にすることなど、競争や結果ではなく、他者を受け入れ、価値観を認め合う事も覚えた。


ランニング教室で子どもたちと
ランニング教室で子どもたちと

3つ目は、地域振興、経済発展だ。

2020年11月から、定期的に地元千葉県銚子市にて地域の方々向けにランニング教室を開催している。発起人として後押ししていただいている株式会社銚子スポーツタウンの小倉和俊さんと連携して地域のみなさんの健康増進を目的として行っているが、最近はまさしく老若男女問わず参加し「月いちの楽しみ」と言ってもらえる。

市外、県外からの参加者も増え、宿泊をしつつ参加してくださる。スポーツイベントを通して経済発展も期待される。


廃校となった小学校で行った
廃校となった小学校で行った

ざっくりと3つ述べたが、この事柄を必要なこと、価値のあるものとし、発信・実行していくことが『アスリートが社会に影響を与えられること』だと感じる。

今すぐ世界を変えることは出来ないが、スポーツを通して前向きに変化できる部分も多くあると思うし、価値のあるものにしていきたいと思う。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)