先日、素晴らしいメンバーとともに、一般社団法人「Woman's ways」を立ち上げた。

私たちが、さまざまな想いを込めて名付けた「Woman's ways」。

そこには、女子アスリートが安心して競技を続けられるよう、身体の変化や生理などの課題に向き合い、寄り添う団体でありたいという気持ちが込められている。

代表を務めるのは、元バドミントン日本代表の潮田玲子さん。そして理事には、元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんと、元バレーボール日本代表の狩野舞子さん。私は、恐れ多くも副代表を務めさせていただくことになった。


「Woman's ways」を立ち上げました
「Woman's ways」を立ち上げました

この団体を立ち上げたキッカケは、潮田玲子さんとの対談だった。

そこでは「女子アスリートが抱える問題」を題材に、現役時代に起こった、さまざまな経験談を話し合った。選手の頃には、何が普通で、何が普通でないのかも分からなかった。そして、嫌なことや辛い事があっても「今」に必死で、解決策など考える余裕も無かった。

しかし、過去を振り返り、話せば話すほど、どんどんと課題が浮き彫りになった。私たちがこれまで経験してきたことを元に、引退した今だからこそ、「現役アスリートたちに貢献できることがあるのではないか」という想いが生まれた。その事が、この団体の立ち上げを後押しした。

自分自身の身体が資本となるアスリートは、常に自分の身体と向き合っている。しかし、成長とともに変化する身体のことをしっかりと考え、正しい知識を元に行動出来ているアスリートは、どれくらいいるだろうか。

正直、私は出来ていなかったと思う。

特に女子アスリートは、成長期に自分の体をコントロールする事が非常に難しい。

女子アスリートだけではなく、女性であれば誰もが経験する月経。個人差はあるが、月経が始まると、それによってPMS(生理前症候群)や生理痛などとも闘わなければいけない。さらには、ホルモンの影響によって、脂肪を蓄えようとする力が働いたり、むくみや体調不良、感情のコントロールまでもが難しくなる。

アスリートは、迫り来る試合によって起こるストレスやプレッシャーに負けぬよう、日々、努力を積み重ねているが、月の半分以上が生理の影響を受けながらの競技生活を送っている。心技体の全てを保つためにも、女子アスリートにとっては、切っても切り離せない大切な問題である。

今、自分の身体に起こっている事が何なのか。果たして、それに対する対処法は合っているのか。アスリートとしての活躍が著しい10代~20代は、最も身体的な変化が大きく、そこへの対応能力が競技人生を左右する。

このように、さまざまな局面にぶち当たる時期に、今、抱いている不安や疑問を、安心して相談出来る場所があれば、もっと競技に集中できるのではないだろうか。

私は現役時代、辛いと思うことにも耐えていたし、嫌な事やおかしいと思う事にも、あまり声を上げられなかった。そんな経験があるアスリートは、私だけではないはずだ。その原因はいろいろ考えられるが、日本ではまだまだ、我慢することが美徳のような風潮があることも一つだと思っている。

短い競技人生。1人でも多くのアスリートが悔いなく過ごせるよう、私たちの経験や、選手時代にこういう情報があれば、もっと安心して競技に取り組めた、という物事を共有できる場を提供していきたいと考えている。

そして、私たちも一緒に問題と向き合ったり、解決策を学ぶ中で、若き夢を持った選手たちとともに成長していければと思っている。

女子アスリートが、充実した競技人生を送り、引退した後も輝くためには、どういった環境が必要なのか。そのために出来ることはたくさんあるが、不安要素を1つでも減らし、アスリートとしても、1人の女性としても、選択肢が広がる未来を作っておくことは、きっと大きな支えになるはずだ。

私たちに出来ることを少しずつ形にし、可能性が広がる世界を創っていきたい。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)