パリ五輪開幕まで2年となった7月26日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が「オリンピックの新しい時代が、パリに迎えられる」と、声明を出した。「ジェンダーバランスがとれ、若者に向けたスポーツが行われる」と説明。「new era(新時代)」を強調した。

IOCが掲げる「男女平等」は、26日に発表されたスケジュールにも表れている。全競技を締めくくるのはバスケットボールの女子決勝、マラソンも初めて女子が最終日で1日前の男子より後に行われる。卓球や重量挙げ、レスリングなども女子種目が最後だ。

もう1つのキーワードの「若者」を代表するのは、パリ中心部のコンコルド広場で行われるスケートボードなどの都市型スポーツ。東京で実施された野球・ソフトボールと空手が採用されず、若者中心に人気があるブレイクダンスが新たに行われることも特徴的だ。

大会が目玉とするのは、セーヌ川での開会式。初めて競技場の外で行われる式では、選手たちが160隻の船でパレード。有料無料を合わせて60万人の観客が集まるという。パリでは、今までとは違う「五輪の風景」が展開される。

東京五輪前を思い出す。バッハ会長は、同じように「五輪新時代は東京から」を強調していた。スケートボードなど若者を意識した競技、女子選手数増大、初めて五輪とパラリンピックを一体化した開閉会式…。「新時代の五輪」は、東京で幕を開けるはずだった。

ところが、新型コロナの感染拡大で、すべてが吹き飛んだ。開催の可否も問われる中で1年延期された大会で、重要視されたのは安全と安心。無事に開催することが最優先されて「新時代」は忘れ去られた。感染下での開催は評価されたが「祝祭ムード」を感じることは最後までなかった。

パリ大会は、IOCにとって「リベンジ」だ。東京から発信しようにもできなかった「新時代の五輪」をパリで成功させる。バッハ会長の言葉の裏に「東京はなかったことにして、パリでは」という思いを感じるのは、考えすぎだろうか。

もっとも、パリ五輪にも問題がないわけではない。警備とコストだ。五輪メイン競技場になるパリ郊外サンドニで5月に行われたサッカーの欧州チャンピオンズリーグ決勝ではファンの暴走に警備当局が催涙ガスで対抗。キックオフが遅れる事態となった。大会組織委員会のエスタンゲ会長は「開会式は予定通り」とするが、観光地を利用した競技運営もあって安全面での不安は残る。

総額40億ユーロ(約5600億円)の予算も、新型コロナやウクライナ情勢悪化の影響による世界的なインフレで大幅増は確実。マクロン大統領は「国民に負担はかけない」と話すが、コスト増による開催計画見直しや規模の縮小も現実味を帯びてきている。

それでも、新型コロナがさらに収まっているであろう2年後のパリ大会は、五輪特有の「祝祭ムード」に包まれるはずだ。多くの選手が口にする「パリまで休んでいるひまはない」。東京五輪が終わって1年しかたっていないが、次のパリはすぐそこまで来ている。

(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)