サーフィン日本代表「波乗りジャパン」が快挙を達成した。国際サーフィン連盟主催のワールドゲームズ(世界選手権)で、男子が団体優勝。男女を通じ初の「世界一」に輝き、24年パリ五輪出場枠第1号を獲得した。東京五輪銀メダルの五十嵐カノア(24=木下グループ)も日本人として大会初制覇を果たした。

各競技でパリ五輪に向けた代表争いがスタートしているが、サーフィンも今回が初の選考大会。東京大会では男女各20人だった選手数が各24人に拡大され、選考方法も決まっている。

東京と大きく違うのは、今回と24年世界選手権の団体優勝国に国別出場枠が与えられること。東京では1カ国最大男女各2人で、プロ最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)やワールドゲームズ上位者、大陸別最上位者ら出場権はすべて個人に与えられたが(開催国枠は日本が未使用)、今回の国別出場枠は個人とは別。つまり、今回の男子出場枠獲得で日本男子は最大3人出場が可能になる。

大会前、日本代表は「一番の目標は男女の出場枠獲得」としていた。世界の強国が3枠目を狙う中、日本男子は優勝した五十嵐に続いて村上舜(25)が11位、上山キアヌ(21)が25位に入り、団体戦初優勝。女子の米国とともに、追加となる国別枠1を獲得した。

サーフィンの代表選考は複雑だ。東京大会の「出場権」を先に手にしたのは19年ワールドゲームズでアジア最上位になった男子の村上と女子の松田詩野。「条件付き」とはいえ、五輪初採用のサーフィン「代表候補」として注目された。テレビの密着取材などメディアも取り上げた。五輪の延期で、中途半端な「代表候補」状態も1年延びた。

ところが、東京大会直前のワールドゲームズで逆転された。他の選手たちの好成績で優先順位が低かった大陸枠が消え、東京五輪代表の座は幻になった。それだけ、日本のレベルが高かったということだが、選考方法も問題視された。

今大会は国別枠が与えられるだけ。東京大会と比べて、すっきりした。選考だけを考えれば、各国とも団体戦に集中すればよかった。五十嵐も「一番の目標はチームの優勝」と話し、初の世界一にも「個人はボーナス」と言った。

快挙には、エースの力も大きかった。カリフォルニアで生まれ育った五十嵐にとって、28年ロサンゼルス五輪の会場候補でもある今大会のハンティントンビーチは「ホーム」。知り尽くした波の特徴や攻略法を仲間に伝え、優勝に導いた。チームを「ファミリー」という五十嵐の姿勢は、チーム重視の日本らしい。

16年にサーフィンの五輪実施が決まった時は「恥ずかしくない成績を」と話していた日本サーフィン連盟(NSA)が、米国、ブラジルなどに続く「強国」に成長した。五十嵐の活躍とともにNSAが取り組んできた強化の成果でもある。

パリ五輪の開催地はフランスから遠く離れた仏領タヒチ。世界屈指の大波を克服するために、NSAでは独自の強化合宿も検討されている。東京五輪(銀1、銅1)を上回るメダルラッシュへ、パリ五輪の楽しみが増えそうだ。(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

東京五輪銅メダルの都筑有夢路(2021年7月28日撮影)
東京五輪銅メダルの都筑有夢路(2021年7月28日撮影)